作品情報 2012年日本映画 監督: 山下敦弘 出演:森山未來、高良健吾、前田敦子 上映時間:114分 評価★★★★(五段階) 2014年DVD鑑賞6本目
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【ストーリー】
1980年代、父親が性犯罪で捕まり一家が離散したため、中卒で日雇いとして働く19歳の青年、貫多(森山未來)。稼いだ金も風俗や酒に消えてしまうため、ぼろアパートの家賃すら払うことが出来ない最低限の生活をしていた。
貫多は職場で新入りのバイトで専門学生の日下部(高良健吾)と仲良くなり、初めて友人ができて浮かれる。さらに、日下部のアシストもあり、気になっていた古本屋のバイトの女子大生、康子(前田敦子)ともお近づきなれた。しかし、貫多の無頼で自分勝手な性格が、次第に他人との関係をおかしくしていき…
【感想】
芥川賞をとった西村賢太の自伝的小説を映画化。原作は未読ですが、いかにも無頼派の青春というのが、草食ばかりふえた最近ではちょっとみられない、どこか懐かしい感じがします。僕自身も貫多と違ってごく普通の家庭に生まれましたが、友人や彼女がいなくて悶々としていた10代後半を思い出しました。貫多と違って酒や風俗にいりびたりませんでしたが、ひがみっぽいところはにているなあとしみじみ。
貫多にとってショックだったのが、自分の友達だった日下部に彼女・美奈子(中村朝佳)ができ、3人で飲んだときのことでした。美奈子は薄っぺらい会話しかせず、いかにもバブル期の頭の悪い大学生という感じなのですが、日下部はそんな彼女と同じ世界の住人に。自分と同じ職場でリアルな生活をしていた貫多にすら馬鹿に見える彼女が、大卒という肩書きを持っているだけで、自分よりも社会的地位が上のように振る舞う。たった一人の親友と思った日下部もしょせん向こう側の人間だった、と思えたときに、貫多のなかで何かが壊れてしまったのはよくわかりました。
しかも、読書という共通の趣味をもっていて心が通じ合ったと思えた康子も、貫多のリアルとは違う、学生らしい甘い考えしかもっていません。この描写は男性と女性で見方が分かれるでしょうが、結局、学生のあまちゃんの世界と、底辺で生きる男の世界は交わらなかった。ただ、これをきっかけに夢もなく自堕落な生活を続けていた貫多が、いつ日の目をみるかもわからない小説を書き始めるというのシチュエーションはすんなりと受け入れられました。
森山未來の駄目男っぷりはたいしたもので、彼の作る独特な世界に冒頭からぐいぐい引き込まれます。端から見ているとおもしろいけど、近づきたくないタイプ。短い出演ながら強烈なインパクトを残したのは彼の職場の先輩、高橋役のマキタスポーツ。原作には出てこないらしいが、彼の存在がこの作品に救いをもたらしたといっても過言ではないでしょう。
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