作品情報 2013年米国映画 監督:リー・ダニエルズ 出演:フォレスト・ウィテカー、オプラ・ウィンフリー、ジェーン・フォンダ 上映時間:132分 評価★★★★(五段階)鑑賞場所品川プリンスシネマ 鑑賞日2月25日 2014年劇場鑑賞31本目
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【ストーリー】
南部の農園で育ったセシル(フォレスト・ウィテカー)は子供のころ、父(デヴィッド・バナー)を農園主の息子(アレックス・ペティファー)に殺され、家の中の作業をするハウスニガーとなった。やがて農園を脱出し、ボーイとしてワシントンのホテルに勤めるようになった彼は、ホワイトハウスに採用され、アイゼンハワー大統領(ロビン・ウィリアムズ)の執事の一人になる。
仕事熱心な彼は代々の大統領に信頼されるが、自宅になかなか帰れず、妻のグロリア(オプラ・ウィンフリー)は酒に逃げるようになった。息子のルイス(デヴィッド・オイェロウォ)は公民権運動華やかりしころに大学生となり、人種差別反対の活動家になり、国に逆らうことを許さないセシルと衝突する。
【感想】
実際にモデルとなった人物がいるそうですが、映画で見る限り、何人もいるホワイトハウスの執事はみんな黒人ということにびっくり。これって、黒人をある種の愛玩動物として見ていたことでしょうか。南部も執事はみな黒人なわけですし。また、第一次大戦後になっても、南部では奴隷のような扱いで、簡単に殺されていたというのも衝撃的でした。
中盤までは家族パートは余計では、と思っていました。グロリアと隣人の不倫を臭わす描写とか、ありきたりで退屈。でも、ルイスが大学に進学してから話しは深刻になります。白人に父を殺されながらも、白人のトップたる大統領に仕えて、並の白人では夢のような待遇となるセシルは、どうしても大統領を擁護してしまいます。しかし、ルイスは、それは白人のお情けに過ぎず、人間は平等でなければと自分の道を突き進みます。公民権運動の激化で、ルイスがどんどん先鋭的になり、セシルたち一家と離れていくのがなんとも悲しい。
その一方で、人種差別者の連中をみていると、同じ人間にたいして、こんな残酷なことができるのか、と怒りと哀しみが満ちてきました。映像の力は本当に大きい。映画の中でもケネディ大統領(ジェームズ・マースデン)が、テレビニュースを見て、初めて現地の悲惨な状況を知ったシーンが出てきますが、僕も本などでは何回も読みましたが、映像で差別の様子をみているのでは全然違う。この映画は、戦後の米国史を追っていくわけですが、人種差別問題に絞っているので、余計、その印象は高まりました。
従って、セシルはもとより、ダニエルズ監督ら、黒人たちにとって、大統領が黒人となったオバマ氏の登場が衝撃的で歓喜すべきことだったことは分かります。ただ、それまで俯瞰的だった映画が一気に親オバマになってしまうという感覚は、バランスを崩しているように見えてなりませんでした。
それにしても豪華キャストにうっとり。マライア・キャリー、テレンス・ハワード、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、 ジョン・キューザックなど、とにかく、大物がずらり。これだけリベラルな作品を撮るというので、リベラル派が多いハリウッドでは、出演希望が多かったのでしょうか。
制作費は3000万ドルなのに対して、1億ドル以上のメガヒットを記録しており、米国で広い関心を呼びました。しかし、黒人差別の映画では、よりハードな描写が多い「それでも夜は明ける」が今年のアカデミー賞を席巻。本作はノミネートすらされませんでした。ちょっともったいない気がします。「それでも夜は明ける」の日本公開はまだ先ですが、こちらも楽しみですね。
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