作品情報 2013年アメリカ映画 監督:スティーヴ・マックィーン 出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ブラッド・ピット 上映時間:134分 評価★★★★★(五段階) 鑑賞場所TOHOシネマズ渋谷 鑑賞日3月10日 2014年劇場鑑賞38本目
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【ストーリー】
1841年、ニューヨークで自由黒人として、家族と平和に暮らしていた音楽家のソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ある日だまされて、南部へ逃亡奴隷として売り飛ばされてしまう。自分は自由黒人だと訴えるが、激しい暴力を受ける。
ニューオリンズで奴隷商人フリーマン(ポール・ジアマッティ)に名前も奪われ、プラットという名を押しつけられた彼は、農園主のフォード(ベネディクト・カンバーバッチ)に売られる。フォードは紳士的だったが、理不尽ないじめをする大工のティビッツ(ポール・ダノ)に反抗したところから、殺されかけ、別の農園主、エップス(マイケル・ファスベンダー)に転売される。エップスは奴隷は家畜と考え、鞭で殴るのを楽しみにする男だった。
【感想】
「リンカーン」「ジャンゴ」など、当時の奴隷制度の問題点を描く作品は最近増えているけれど、本作は、白人の農園主が暴力をふるうだけでなく、女性の奴隷を性のおもちゃにしてもてあそぶという、アメリカにとってタブーともいえる題材も、きちんと描写しています。ブラッド・ピットが制作に名乗りを上げたとはいえ、ハリウッドのメジャーは皆そっぽを向き、監督、主要な俳優は英国人で占めるなど、今なお難しいテーマを、しっかりとした作品に仕上げ、オスカー受賞までいたったのは、スティーブ・マックイーン監督が早くも名匠への道を歩み始めたことの証しでしょう。
ソロモンの苦難は筆舌に尽くしがたいですが、単に過激なエピソードをつなげるだけでなく、過激な描写の裏のシーンが実にえぐい。ソロモンが白人に反抗したとして、木に吊らされる場面では、彼が殺されそうなのに、回りは子供たちを含めて、普段のままの生活をしており、何の関心も向けない。実は、ソロモン自身も、白人が黒人を吊らしている場面に遭遇したことがあるのだが、そのとき、ソロモンは何もできなかったのだ。こうした無力感がいかに彼らの間に蔓延しているかがよく分かりました。
ティビッツやエップスが、黒人につらく当たるのは、実は自分が白人のなかでは弱い人間であるという描写もみごとです。通常、こういう話では悪人は根っからの悪人ですけど、自分の弱さが克服できないどこにでもいそうな人が、いつ、このような迫害をする人間に変わっても不思議ではないことをよく表しています。そういう意味では、一見、淑女そうにみえるエップスの妻(サラ・ポールソン)の冷酷さが一番、怖かったかもしれません。さらに、紳士的で牧師でもあるフォードが、表面的には同情しても、ソロモンを奴隷の身分から助けることは何もしなかったというのも象徴的でした。
クライマックスは、ソロモンの心だけでなく、見ているこちらの心も張り裂けそうになりました。「それでも夜は明ける」というタイトルは、ソロモンにとってはあっているかもしれないけど、何万、何十万という歴史に埋もれた奴隷たちにとっては、一度も夜は明けなかったわけです。原題は「12 YEARS A SLAVE」ですから、配給会社がどこまで狙ったのかわかりませんけど、何とも考えさせられるタイトルでした。
登場人物は、みなすごい演技力なのだけど、キウェテル・イジョフォーはなぜオスカー受賞しなかったのかなあ。「ダラスバイヤーズクラブ」はまだ見ていないのでなんともいえないのだけど、本作はオスカー級の熱演。鞭で打たれるなど体当たりもそうなんだけど、台詞はなくても、表情や目で伝わってくるのがすごい。みごとに助演女優賞を受賞した、女奴隷役のルピタ・ニョンゴは、映画初出演とは思えないほど見事でした。ブラピがおいしい役だったのは、ご愛敬かでしょうか。
最近、本当に黒人差別のテーマの映画が増えましたね
未見ですが、今から40年以上前の作品で、女性奴隷の問題もとりあげた問題作。
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