作品情報 2012年サウジアラビア映画 監督:ハイファ・アル=マンスール 出演:ワアド・ムハンマド、リーム・アブドゥラ 上映時間:97分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所川崎アートシネマ 鑑賞日3月13日 2014年劇場鑑賞39本目
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【ストーリー】
サウジアラビアに住む10歳の少女ワジダ(ワアド・ムハンマド)は活発な少女で幼なじみの男の子アブドゥル(アブドゥルラフマン・アル=ゴハニ)とは遊び仲間。家族以外の男女が一緒にいることが禁じられているサウジアラビアではタブーで、母親(リーム・アブドゥラ)や校長先生(アフド)からいつも怒られている。
アブドゥルが自転車を乗り回しているのをみたワジダも自転車がほしくなる。しかし、女の子が自転車に乗るなんて、とんでもないと、またも母から怒られる。自転車代を稼ごうと、同級生にミサンガを売ったりするが、とても買えない。しかし、学校でコーランの暗唱大会が開かれることになり、優勝者に賞金がでることをしった彼女は、コーランの猛勉強を始める。
【感想】
運転した女性が逮捕されたり、王女が軟禁されたりなど、断片的なニュースでは知っていたけれど、サウジアラビアがどんな国なのかまったく知りませんでした。厳格なイスラム教国というとイランを思い出すけれど、イランは数々の映画の名作を出しているのに、サウジアラビアは映画そのものが禁止されているのだから、素顔というのが見えませんでした。
映画のなかの女性差別は予想以上に激しかった。隣のビルで工事が始まると、男の作業員からみえないようにと、女子校の生徒たちは皆、建物のなかに入ってしまいます。ワジダの母が、子供が産めない体になると、父親(スルタン・アル=アッサーフ)は平気で第二夫人をめとろうとします。以前、イスラムでは複数の妻を持てることを女性も分かっているという話しを日本で聞いたことがありますが、愛している夫や父を他人に奪われてしまうことがどんなにつらいことなのか、女性監督の作品だけに納得できます。実際に、監督は男性のスタッフと同じ場所で仕事ができないため、車の中から無線で指示していたそう。その苦労を乗り越えて、佳作が生まれました。
もちろん、女性差別で女性が苦しんでいるだけではありません。家の中ではカラフルな衣装をつけ、ショッピングモールに真っ赤なドレスを買いに行ったり、学校でこっそり足の爪にネイルアートをつけたり、おしゃれをしたいという女心は万国共通。女性に対する制約を何とかしたたかに乗り越えていこうという気概が感じられました。そして、その姿がユーモアたっぷりに描かれているのも良い。
それでも、女性差別は厳しく、しかも母や先生といった世代はそれを完全に受け入れています。そんななか、けなげに生きるワジダや、彼女と仲良しのアブドゥルが、僕ら日本に生きる人たちと大して変わらない発想であることは勇気づけられました。サウジのような厳格な状態が、いつまでも続くのかどうか、若い世代はもっと自然に生きてほしい、スクリーンのワジダたちの姿を応援したくなります。家系図に女性の名前がないのをみつけたワジダが自分の名前を貼り付けるシーンは思わずジーンとしました。
イスラム教国の女性を描いた作品を紹介。アフガニスタンで学校に行きたい少女を描いた「子供の情景」。映画公開後、パキスタンのマララさん銃撃事件があり、深く考えさせられました。
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同じくイランで、ロックバンドを描いた「ペルシヤ猫は誰も知らない」。西洋の音楽は悪魔の音楽として禁じられているけれど、若者が身の危険を顧みずに音楽に取り組む姿をとらえました。
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