作品情報 2013年ボスニア・ヘルツェゴヴィナ/フランス/スロヴェニア映画 監督:ダニス・タノヴィッチ 出演:ナジフ・ムジチ、セナダ・アリマノヴィッチ 上映時間:74分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所川崎アートシネマ 鑑賞日3月13日 2014年劇場鑑賞40本目
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【ストーリー】
ボスニア・ヘルツェゴヴィナの山村に住むナジフたちロマの一家は、仲むつまじい夫婦と幼い2人の娘がおり、貧しいが平穏に暮らしていた。ところが、妻のセナダが、激しい腹痛を訴えて倒れてしまう。
ナジフは慌てて病院に彼女を運ぶが、セナダは流産しており、このままでは母胎も危ないといわれる。しかし、ナジフは保険を持っておらず、手術代が払えない。病院はカネを払わなければ手術をしないと突き放した。ナジフは妻を助けるために奔走するが…
【感想】
グローバリゼーションとかいわれますが、世界はごくごく一握りの金持ちと、圧倒的多数の貧乏人にわかれつつあります。カネがなければ手術をしないという病院の立場は冷酷なようにみえますが、アメリカでも、オバマケアが始まる前は、こういう状況は普通にあったわけで、日本がいかに恵まれているかわかります。
ボスニアは内戦は終了しましたが、失業率は30%近くにのぼり、中でも少数民族であるロマの失業率は90%にも上るそう。ナジフたちも、うち捨てられた自動車を解体して、出来た鉄くずを売って生活しています。電気代もろくろくはらえず、厳しい冬のさなか、生き抜くのがやっとなわけです。手術代も日本円にすれば10万円ちょっとなのですが、それすら払えない。
印象的だったのが、ナジフが戦争時代のほうがましだったといったこと。兵隊になれば給料もでる一種の定職があるわけですから、失業中の今よりもはるかにましだったといいたい気持ちは分かります。まさか、平和になっても貧乏だから命の危機にさらされるとは思わなかったのでしょう。ただし、貧乏といっても暖かい家族がいて、テレビや車もあるのだから、そこそこの生活はできているのではないかと思ってしまったのも事実です。
新聞でこの問題をしったタノヴィッチ監督は、実際の出来事を当人に演じさせ、素人ゆえに演技指導はしなかったそうです。にもかかわらず。ナジフの存在感が、ハリウッドスターを凌駕して、主演男優賞を受賞できたことは、演技とは何なのだろうと、考えさせられました。また、このような貧困ゆえに命の危機に陥るといったことは、今後、日本を含めて世界中で起きても不思議ではありません。自分や自分の家族をどうやって守るか、結構、真剣に考えなくてはならないときではないでしょうか。
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