作品情報 2013年日本映画 監督:吉田恵輔 出演:中島健人、広瀬アリス、市川知宏 上映時間:111分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所TOHOシネマズ錦糸町 鑑賞日3月14日 2014年劇場鑑賞42本目。原作漫画もアニメも未見
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【ストーリー】
進学校を追い出され、北海道の大蝦夷農業高校に進学した八軒勇吾(中島健人)は、夢も希望もなかった。だが、同級生は牧場の一人娘で親の後を継ぐことが決まっているアキ(広瀬アリス)、同じく実家の赤字の牧場を建て直すのが夢の駒場(市川知宏)など実家が農家というものがほとんどだった。
農業高校をなめていた八軒だが、全寮で早朝から農作業。さらに、自分がかわいがって育てた子豚を出荷して食肉にしなければならないなど、ショックの連続。だが、食べ物の大切さや、日本の農業の置かれた厳しい現状に触れるとともに、大切な仲間との友情をはぐくむうちに、八軒は変わっていく。
【感想】
動物映画というと、動物はかわいい愛玩動物に決まっていました。しかし、経済動物に愛着をもってはいけないという言葉通り、どんなにかわいがって育てた豚や牛でも、しょせんは売られて人間に食べられてしまう存在。家畜には育てた人の思いがちゃんとあるのだ、普段の食卓では意識しないそんなことを、八軒の目を通じて気づかせてくれました。
また、早朝から激しい肉体労働で農作物を出荷しても、経済的効率は大してよくありません。八軒がバイト先の農場で失敗して、500リットルもの牛乳を無駄にしてしまいますが、わずか4万円にしかならないのです。動物を飼育するには肥料代、光熱費、人件費などコストもかかるし、土日も休みがない。借金まみれの農家も多い。それでも家業が農家なら続けなければならない。さらっと描いていましたが、アキは美人でも一人娘だから養子をとらなければならないから、同じ年頃の女の子のようなおしゃれにデート、なんてとてもできないわけです。そのことを分かっているから、彼ら彼女らはとてもシビアに現実をみており、ごく普通のモラトリアムな八軒との対比が浮き彫りになります。
しかし、夢や友情というのは青春の特権です。農家の苦労を知らない八軒がこれらのことを知るとともに、こうした夢や友情について、苦労しすぎの同級生たちを感化していくというストーリーはうまい。農業高校の様子を地道に描いているからこそ、クライマックスの八軒の行動が光るのです。
配役も適役ばかり。アキの父が竹内力で、叔父が哀川翔、祖父が石橋連司というのは、ビデオシネマかと突っ込みたくなりましたが、全員、農業関係者としてはまっているんですよねえ。今大ブレイクの黒木華が、お蝶夫人のキラキラの女子高生でちょい役ででてますし、中村獅童、吹石一恵といった教員陣もいい。でも特筆すべきは、同級生の多摩子役の安田カナ。非常に太った女優で、普通の作品では、場面のにぎやかしにしか写らないのですが、一番現実的に物事を見ており、おいしいところをさらっていきます。青春映画は脇役まで美男美女の物語なんて、日本映画の悪いところですが、ここは感心しました。
TPPをはじめ日本の農業がこれまで以上に厳しくなるとともに、消費者にとっても食の安全は重要なテーマ。こうした問題は肩肘張らずに青春映画でみせてくれる本作は、予想以上の拾いものでした。
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