2014年04月01日

東京家族

 小津安二郎の世界的な名作「東京物語」を山田洋次監督がリメイク。正直、オリジナルをみていなければ、まずまずなんですが、オリジナルをみてしまうと、あまりの出来の悪さに愕然とします。リメイクといわずに、原案として、もっと自由に現代の家族を描けばよかったのに。

 作品情報 2012年日本映画 監督:山田洋次 出演:橋爪功、吉行和子、妻夫木聡 上映時間:146分 評価★★★(五段階) 2014年DVD鑑賞11本目



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 【ストーリー】

 瀬戸内の島に住む周吉(橋爪功)と妻のとみこ(吉行和子)は、東京で暮らしている3人の子供たちにあうために上京した。開業医の長男、幸一(西村雅彦)、美容室を開いた長女、滋子(中嶋朋子)、フリーターで舞台関係の仕事をしている次男の昌次(妻夫木聡)。

 3人とも歓迎してくれたが、それぞれの生活があるため、なかなか両親の相手をする時間がない。それぞれの家やホテルをたらいまわしにされる。昌次のアパートに来たとみこは、恋人の紀子(蒼井優)を紹介され、意気投合して機嫌がよくなったのだが。


 【感想】
 「東京物語」を見ていないひとは、こちらではなく、今なおあせない不朽の名作を体感していただいたほうがいいでしょう。本作の方はオリジナルを妙に気にする一方、現代社会の家族の断絶という肝心なテーマが陳腐になった現在、凡庸な描写にとどまってしまった。ベテラン山田監督だから、泣かせどころ、笑いどころというのは手堅くまとめているとはいえ、DVDで十分でした。

 まず、オリジナルにとらわれすぎた欠点として、今の時代、こんなせりふを使わないだろうという、大仰な言葉遣いと演劇的のような、せりふをはっきり読んでいるような登場人物に鼻がつきました。オリジナルの時代だったら浮かなかったでしょうが、特に中嶋朋子や林家正蔵のしゃべりかたは聞いているだけでいらいらしました。

 オリジナルの時代は昭和20年代で、電話も個人の家になく、東京に来るには夜行列車で2日がかりという距離があったからこそ、久々に会う両親を邪険にするような子供たちの姿が衝撃であり、なおかつ、個人社会というのはこういうものだという、社会風刺にもなっていたわけです。また、広島の老夫婦にとっては、東京に行くこと自体が、生涯ただ1度の命がけの旅ともいえたものでした。

 しかし、現在では、瀬戸内の島とはいえ、新幹線とフェリーを使って簡単にいけるわけですし、何より、普段から電話で会話ができるわけです。心理的な距離感はまったく違う。また、平均年齢も今や女性は86歳の時代。まだ、68歳なのに、どれだけとみこが年寄り扱いされているかはびっくり。田舎に行けば農作業の現役としてばりばり働いている年齢ですよ。オリジナルと年齢を変えるとかすればいいのに、違和感が感じまくりでした。

 オリジナルでは原節子の役に当たるだろう、蒼井優の役割というのもよく理解できませんでした。とってつけたように、東日本大震災のボランティアで知り合ったという話にしていますが、そういう設定が本筋にいかされていないのが、まったくのなぞでした。

 橋爪、吉行の老夫婦の諦観の演技はさすがベテラン。また、妻夫木のいかにも現代の若者らしい、へらへらしているけど根が優しいという設定もよかった。できれば他の登場人物も、こういう現代的なキャラにおきかえればいいのに、とつくづく思いました。

 現代社会の親子、家族をテーマにするのならば、是枝裕和監督の「歩いても歩いても」のほうがはるかに上でした。ただ、「東京物語」をみていなければ、評価はもっと良かったという気もします。つくづくもったいない作品でした。


posted by 映画好きパパ at 08:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 2014年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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