作品情報 2013年アメリカ映画 監督:ジョン・リー・ハンコック 出演:エマ・トンプソン、トム・ハンクス、ポール・ジアマッティ 上映時間:126分 評価★★★★(五段階)鑑賞場所109シネマズグランベリーモール、鑑賞日3月26日 2014年劇場鑑賞47本目
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【ストーリー】
英国の女流作家、P.L.トラヴァース(エマ・トンプソン)は、自分の代表作「メリー・ポピンズ」を映画化したいというウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)からの要求に頭を悩ましていた。世間から過去の人になっていた彼女にとって、家を維持する金すらなかった。だが、自分の分身ともいえる大切な作品を、金儲け主義のハリウッドでいいかげんな作品にされたくなかったのだ。
20年越しの交渉の末、細かいところまで自分の条件を認めさせたトラヴァースは映画の契約と脚本のチェックをするために、ロサンゼルスにいく。脚本はNG、主演俳優はNG、アニメを入れるのはNG…。それはディズニーにとって、いまだかつてない手ごわい交渉相手だった。その裏には、彼女のある思いがあったのだ。
【感想】
非常に良くできた作品なんですが、公開後、メリル・ストリープが「ウォルト・ディズニーは人種差別主義者」と糾弾するスピーチをしたため、アカデミー賞レースから脱落したかわいそうな作品。実際、ディズニーは黒人やユダヤ人を差別した点は問題ですが、この映画とはかかわりがないし、少なくとも、自分の娘との約束を果たすために、こんな手ごわいおばさんと20年も交渉するなんて、単なる拝金主義者には思えません。
このトラヴァースの嫌味なおばさんぶりを、エマ・トンプソンが生き生きと演じていて実に楽しい。飛行機のなかでは、前の席にあかちゃんがいると、「フライト中、なかせないでね」と母親に嫌味をいう様子は、昨今、日本の公共交通機関内で赤ちゃんに冷たいということが問題になっていますが、何十年前の欧米でも、こうした嫌味なおばさんがいたというのはちょっとした新発見みたい。
タイトルは邦画にしてはひねったものです。メリー・ポピンズを映画化するためのトラヴァースとの約束というのが大きな意味ですが、同時に、前述したこの作品を映画化するという20年前のディズニーと娘の約束があります。さらに、そのことは、親と娘の約束ということで、トラヴァース自身の約束にもつながっていきます。
幼いころ豪州で過ごしたトラヴァースは、父(コリン・ファレル)に愛されて育ちました。しかし、この父というのが、空想ばかりしていて現実社会に適応できないだめ男。子供たちにはファンタジーのような夢物語をたくさん教えてくれますが、勤務先の銀行の上司からすれば、ろくに仕事ができないとつまはじきにされています。本作の原題は「Saving Mr. Banks」。バンクスさんは、メリー・ポピンズに出てくる主人公ですが、実は、トラヴァースはなき父のことを思って描いていたのですね。僕自身、立派な社会人と言い切れないところがあり、こうした、父と娘の絆をみていると、思わず涙が出てきそうになりました。
また、トラヴァースとアメリカでの運転手ラルフ(ポール・ジアマッティ)の間に、次第に友情が成立していく様子も、親の立場からすればなんともほほえましかった。
メリー・ポピンズというと、ジュリー・アンドリュースとオードリー・ヘプバーンの因縁なんて話もありますが、さすがにそこまで広げずに、原作者関係でまとめていました。ディズニー制作ということで、ディズニーランドがロケ地になっているというのも豪勢でした。
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