作品情報 2013年アメリカ映画 監督:ジョン・ウエルズ 出演:メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー 上映時間:98分 評価★★★★★(五段階)鑑賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜、鑑賞日5月10日 2014年劇場鑑賞63本目
【ストーリー】
8月の暑い日。アル中の父親ベバリー(サム・シェパード)が失踪し、実家に残された母親のバイオレット(メリル・ストリープ)はがんで闘病中との連絡を受けて、バーバラ(ジュリア・ロバーツ)、アイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)、カレン(ジュリエット・ルイス)の3姉妹は久々にオクラホマの実家に集まった。
バーバラは夫ビル(ユアン・マクレガー)の浮気と娘のジーン(アビゲイル・ブレスリン)の反抗期に悩み、カレンは怪しげな婚約者スティーブ(ダーモット・マローニー)を連れてきた。そこに今まで以上に気が立っているバイオレットの毒舌が爆発。家族の秘密を次々に暴き立てていく。
【感想】
家族は他人の始まりという。けれども、同時に血というのは切っても切れない絆。大部分の人は、その折り合いをつけられるけれど、機能不全な家族というのは存在している。この映画をみると、それぞれの家族が愛し合っているがゆえに傷つけあっていく姿がたまらなく哀しくなりました。
薬のせいでハイになったせいか、バイオレットは本音を包み隠さず次々といっていきます。子供が大勢いれば、お気に入りの子供ができるといったり、何もかも失ってもここに残るといったり。先日、NHKで過疎が加速していくという特集をやっていましたが、土地に妄執といっていいぐらい固執するのはなぜなのか。バイオレットは、貧しくて子供のころにはまともな家には住めなかったことが、途中、バイオレットの妹(マーゴ・マーティンデイル)マティ・フェイの証言で明らかになります。しかし、豊かに育った子供たちは、そんな親の苦労が分からない。バイオレットは自分たちを捨てて子供が他の町にいったという恨みと哀しみを内心抱えている。僕自身、親の気持ちも子供の気持ちも良く分かるので、見ていて心が痛かった。特にオクラホマの田舎の風景を美しく描いているのがにくい。
その一方で、3姉妹たちはいずれも家族を作るのに失敗しています。分かりやすい形で序盤から提示されるバーバラはもとより、アイビーもカレンも問題を抱えているのが明らかに。親が問題があったから、子供も家庭をうまく作れなかったのか、毒親の連鎖というのを感じてしまいました。特に、バーバラは気質的に母親に似すぎているか、これでは夫と子供はかわいそうとおもえるほどずばずばとものごとを切っていきます。
こうした女性に比べて、男性陣の頼りなさというのは、現在社会の縮図なのかもしれません。かつては、強い男性が一家を仕切ったけど、今はオタオタするだけで、事態の解決にはなんら役に立たない。ユアン・マクレガー以外にも、クリス・クーパー、ベネディクト・カンバーバッチなんて新旧の名優を取り揃えているのに、みな、役に立たないどころか、事態を悪化させることしかできない。弱きもの、汝の名前は男なり。
一族のドンともいうべき、バイオレット役のメリル・ストリープは「プラダを着た悪魔」の鬼編集長より何倍も怖い。けれど、それが人の弱さの裏返しというのがやがて分かっていきます。ジュリア・ロバーツもそうであり、予告編にもある中盤の取っ組み合いはもとより、クライマックスの対決は、本当に人間の愚かしさと哀しみがストレートに伝わってきました。さすが二大女優。これだけの名優ぞろいのなかでも、真打登場といったとこでしょうか。ゴジラ対キングギドラにも負けない迫力でした。
もとは舞台であり、脚本は戯曲を書いたトレイシー・レッツ、監督のジョン・ウエルズもTV畑で、映画監督としての経験があまりないため、序盤はちょっと平板でしたが、それゆえに中盤以降の狂気に満ちた俳優たちの演技からは目が離せませんでした。
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