作品情報 2013年日本映画 監督:耶雲哉治 出演:早見あかり、竹内太郎、向井理 上映時間:109分 評価★★★★★(五段階)鑑賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜、鑑賞日5月10日 2014年劇場鑑賞65本目
【ストーリー】
新人小説賞を受賞したノボル(向井理)は、高校卒業以来、久々に故郷の町へ帰ってきた。そこで、高校の先輩だった神林(中村優子)とばったり会う。ノボルは高校時代の初恋を思い出していた。
さえない高校生だったノボル(竹内太郎)は、ある日、バスケ部のエースで、幼いころから可愛がってもらった先輩の宮崎(工藤阿須加)に奇妙な頼みをされる。宮崎は学園のマドンナ神林(石橋杏奈)と付き合っていたが、後輩の百瀬(早見あかり)との二股がばれそうになった。そこで、ノボルに百瀬と付き合っているふりをして、神林をごまかしてくれというのだ。世話になった宮崎のために、しぶしぶ引き受けたノボルだが、やがて奔放な百瀬に惹かれるようになる。しかし…
【感想】
L・DKと比べるのもなんだけど、この作品はノボルにしろ、宮崎先輩にしろ、主要登場人物は、みな、実際にいるかと思えるぐらい等身大。とくにこうした青春映画で珍しいのは、家庭の事情が登場人物の行動に大きな影響を与えることでした。
神林は金持ちのお嬢様。百瀬はアル中の父親や幼い弟妹の面倒をみなくてはいけない。4人がダブルデートにいったとき、トイレでリップクリームを塗っていた百瀬が、隣で高価な口紅を塗っている神林を盗み見て、自分のみずぼらしさを恥じてこっそりリップクリームを隠すシーンは、家庭の事情が子供たちを直撃している様子をさりげなく描いていて、ぐっときました。また、奥手のノボルの家に百瀬が訪ねたとき、ノボルの母親(西田尚美)が大喜びして、あれやこれや世話を焼きたがる様子もほほえましい。
さて、百瀬は宮崎が好きなのに、それだからこそ、好きでもないノボルと恋人の振りをしなければならない。彼女もかわいそうだけど、学校では積極的に手をつなぎにくるのに、校門を出てあたりに誰もいなくなった瞬間、「きもい」と手を振り払われるノボルは、よくトラウマにならなかったと思えます。けれども、それまで人を好きになるということを知らなかった彼が、初めて、身近に女性が現れたことで、どぎまぎして、報われぬ恋に陥ってしまうのは、見ているこちらもたまらなく切なくなります。でも、高校時代にこういう経験ができるというのは本当に素敵なこと。
宮崎先輩も本来は二股かける嫌なやつなんだけど、でもそうせざるをえない理由というのも説明されます。そのうえ、ダブルデートのシーンは、あとから思い起こせば、二重三重のトラップが張り巡らされ、よくできた脚本だなあとしみじみ感じます。
早見と竹内は、演技としてはまだ新人の部類でしょうが、その初々しさが本作によくあいました。早見は元ももクロメンバーだそうですが、正直、絶世の美人というわけではないけど、存在感があふれており、今後が楽しみ。あと、カメラワークの勝利だと思うんだけど、百瀬をノボル視点でみるときに、胸とか足をなめまわすように見るので、人生で最も異性への性的関心が高いだろう、この年頃の男子高校生の感情を何も言わずにあらわしています。
工藤、石橋がこの2人を引っ張る良い演技をしており、石橋はL・DKの嫌味な女以上に、女性の怖さを教えてくれます。ノボルの親友でやはりクラスのカーストでは底辺にいる田辺役のひろみ(第2PK)も、良い味をだしています。
そして、なんといっても本作を良作に仕上げたのは、現代パートの向井の落ち着いた声と演技でしょう。彼がいたからこそ、物語に説得力が増します。キャスティングは新人を大胆に起用したことを含めてすばらしいの一言でした。
【2014年に見た映画の最新記事】