2014年07月02日

ある過去の行方

 イランの名匠・アスガー・ファルハディ監督が、フランスを舞台に男女の根深い闇のある心理をサスペンスタッチで描いた作品。最後のほうで、相当注意してみたはずなのですが、一番、重要なシーンを見落としてしまいました。これがあるとないとでは、180度意味が違うので、感想のブログとか読んでいても、解釈がまったく違っています。

 作品情報 2013年フランス・イタリア映画 監督:アスガー・ファルハディ 出演:ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム、アリ・モサファ 上映時間:130分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:川崎市アートシネマ、鑑賞日6月27日 2014年劇場鑑賞105本目



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 【ストーリー】
 別れたフランス人の妻、マリー=アンヌ(ベレニス・ベジョ)と正式な離婚手続きをとるため、アーマド(アリ・モサファ)は、4年ぶりにイランからフランスに戻ってきた。かわいがってきた義理の娘のリュシー(ポリーヌ・ビュルレ)とレア(ジャンヌ・ジェスタン)と再会したが、アンヌは既に新しい男サミール(タハール・ラヒム)と同棲しているのを知る。

 リュシーがサミールを敵視して、夜遊びばかりしていると聞かされたアーマドはリュシーに話を聞く。すると、サミールの妻は、サミールとアンヌの関係を知って自殺を図り植物人間になっている。それなのに、カップルになった母は許せないと告白される。驚いたアーマドはアンヌを問いただすが、まったく違う事情を打ち明けられ…

 【感想】
 これまでイランを舞台にしていたファルハディ監督がフランスに舞台を替え、ヒロインに「アーティスト」のフランス人気女優ベレニス・ベジョを起用しました。これは、イスラムのイランという閉ざされた世界ではなく、もっと普遍的な男女、家族の心理を描きたかったのではないかと推察されます。厳しいイランの検閲では、愛憎のもつれで、自殺するといったシーンもカットされるでしょうし。

 アンヌはアーマドを含めて2度離婚しており、子供たちにとってみればサミールは3人目の父親。そんな複雑な家庭環境は珍しいとはいえ、親子の葛藤や不倫といったテーマは普遍的。特にアンヌが「アーティスト」とは180度違う、ヒステリーで自分勝手な役を演じており、毒親を持った子供たちは大変だと思いました。思春期の娘なのに、実の母よりも何年もあってなかった義理の父を頼ってしまうリュシーがかわいそうでなりませんでした。

 ところが、アンヌがそれだけヒステリーになるには事情があり、そのうえ、自殺未遂の原因がミステリーめいてくるということもあり、画面から目が離せません。結構、手の込んだ伏線を張っているので、わかったときは感嘆しましたが、ぼーっとしていると見逃してしまいます。序盤が緩やかなテンポだけに、集中力を維持するのが結構大変かも。

 タイトルにあるように、過去は過去でしかなく、前向きに生きるというのは人間にとって必要でしょう。しかし、過去に責任をとらされるということも、ままある人生。終盤のやりとり、会話劇は本当に見事でした。それにしても、子供たちは今後どうなるのでしょうかね。

 ベレニス・ベジョの演技は、最初、イランの女優を連れてきたのかと思ってしまったほど、これまでの印象を覆すもの。また、狂言回し役のアリ・モサファの抑えた仕草も魅力的です。また、ポリーヌ・ビュルレが本当に可愛く、このまま名女優になって、日本でもどんどん出演作が見られればなあ、と思いました。
posted by 映画好きパパ at 09:26 | Comment(0) | TrackBack(11) | 2014年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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