作品情報 2013年日本映画 監督: 熊切和嘉 出演:浅野忠信、 二階堂ふみ、藤竜也 上映時間:129分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズ川崎、鑑賞日7月1日 2014年劇場鑑賞106本目
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【ストーリー】
北海道南西沖地震で家族を失った10歳の少女花(山田望叶)は、遠縁の男、淳悟(浅野忠信)に養女として引き取られる。2人は流氷の町、紋別に移り住んで暮らしていた。やがて成長して美しくなった花(二階堂ふみ)に対して、少女時代の花を知っている街の有力者大塩(藤竜也)は淳悟から離れるように説得する。
やがて、2人は北海道を逃げ出すように出て、東京で暮らすようになったのだが…
【感想】
序盤の、北海道南西沖地震のシーンは臨場感あふれ、熊切監督ならではの凝ったフィルムを駆使した映像もあり、思わず東日本大震災のときの恐怖を感じてしまいました。一家が全滅して、たった10歳の少女が1人生き残ったショックを子役の山田が好演していました。それと同時に、母親の遺体を見つけたときの反応や、父に抱かれて津波から逃げるときの描写(サイレンがものすごく怖い)など、中盤以降に重要なシーンが見逃せません。
そして、流氷の街、紋別での生活。わずかな夏の緑の美しさと、雪と氷に覆われた冬の閉塞感を見事にスクリーンによみがえられたのはすごいですし、それ以上に、閉塞した街ならではの、人間関係のいびつさも描いています。熊切監督は「海炭市叙景」もそうですが、北海道を描くのが巧いですねえ。ただ、原作もそうなのかもしれませんが、流氷の海に飛び込んだら、すぐに乾かさないと凍死するのではと突っ込みたくなりますが。
しかし、後半の東京にいくと、その描写とは裏腹に、ストーリーが飛び飛びになってしまいます。もちろん、何から何まで観客に説明する必要はないのだけど、前半のじっくりした描写とは違いすぎるため、とまどいを隠せません。この部分の尺をもう少し伸ばせば、まだ印象は変わったでしょう。
浅野と二階堂はこれ以上ほどないはまり役。浅野のゆがんだ精神、肉欲への反応は本人のやさぐれた表情が十二分にあらわしています。また、二階堂は脱ぎはしなかったものの、妖艶なまなざし、高校の同級生といるときの少女の仕草と、恋敵に対する残酷な表情の使い分けは、彼女の天性の才能を感じさせました。また、独特のしゃべりかたの藤も、本作では雰囲気がうまくはまっており、この3人の間合いというのは面白かった。花の恋人役の高良健吾は出番が少なくてもったいなかった。また、淳悟の恋人役の河井青葉は、あまり聞かない女優ですが、体当たり演技で非常に印象に残りました。
題材からして嫌悪感を示す人もいるでしょうし、浅野や二階堂の好演がさらに、そうしたムズムズ感を助長させます。でも、熊切監督のスタイリッシュな映像で、耽美な世界にひたれ、スクリーンで見る価値のある作品だったと思います。においってそんなに指に残るものなのかなあ。
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