2014年07月05日

消えた画 クメール・ルージュの真実


 カンボジアの大虐殺を生き残って、フランスで映画監督になったリティー・パニュ監督が自らの体験を描いた作品。広い意味でのドキュメンタリーなのでしょうが、土で作った人形のクレイアニメと当時の映像で振り返るという、他に例をみない作品となっています。

 作品情報 2013年カンボジア・フランス映画 監督: リティ・パニュ 上映時間:95分 評価★★★★(五段階) 2014年試写3本目 ドキュメンタリー

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 【ストーリー】
 1975年、13歳のリティー・パニュ少年はカンボジアの首都、プノンペンで両親、兄弟に囲まれ幸せに暮らしていた。教師の父は優しく、兄は音楽好きでギターと詩を愛していた。だが、クメール・ルージュの侵攻で一家の運命は暗転する。教師は知識階級ということで、農村の収容所で強制労働をさせられ、ろくな栄養もないまま、両親や兄は次々と死んでいく。

 【感想】
 これまでも、カンボジアの大虐殺をフィクション、ノンフィクションから描き続けてきたパニュ監督が、封印してきた自分の体験を映像化することを決意しました。映画でも語られてますが、50歳になって「決して経験してはいけない。しかし、もし見たり聞いたりしたら、語り続けなければならない」という衝動が突き動かしたのでしょう。

 人間の俳優ではなくて、人形で当時を再現したというのは、「とても人間の俳優では、あの恐ろしい状態を再現できなかったから」ということでした。かわいらしい人形だからこそ、目をそむけずにいられますが、同時に、なぜこんなことが起きてしまったのか、疑問が頭の中でぐるぐる回りました。人を人としてみることが出来ず、番号で数えることで、自分とは違うものになってしまう恐ろしさ。

 カンボジアの虐殺は当時のカンボジアの人口700万人のうち150万人以上が殺されました。ごく普通の一家が、わけのわからないうちに悲劇に巻き込まれていく。ポル・ポト政権は密告を奨励し、映画の中でも9歳の子供が食物を拾って食べた母親を告発、処刑するシーンが描かれており、人間としての尊厳そのものを奪う行為を繰り広げていました。こうしたシーンの繰り返しで、かわいらしい土人形が、いつのまにか、犠牲者たちの姿に見えてくるのがなんとも不思議です。

 また、ポルポト政権は映画や音楽などで、自国がすばらしい国だとPR。日本でも朝日新聞がそれにのせられて、カンボジアの虐殺を否定する記事を載せたことは有名です。リティー・パニュ監督は、怒りを押し殺しながら、当時のプロパガンダ映画の映像を映し出し、現実と映画の中の虚構の世界を糾弾します。
posted by 映画好きパパ at 09:11 | Comment(2) | TrackBack(1) | 2014年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アジアの人間は搾取でも何でも、手を抜く事ができないから怖い。
Posted by ふじき78 at 2014年07月07日 01:00
アジア人の生真面目さもありますが、全体主義の欠陥も
大きな要因だったと思います。今後はこうしたことが
起きないことを祈っています。
Posted by 映画好きパパ at 2014年07月07日 05:52
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「消えた画(え) クメール・ルージュの真実」
Excerpt: 大変真面目で深淵で、芸術の粋を極めた作品。真の意味での芸術。物言わぬクレイ人形に魂が打ちのめされる。そして、歴史の事なんか何も知らなかったんだ、と、自分の無知に二重に打ちのめされる。ポル・ポト政権、ク..
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