her 世界でひとつの彼女

　二次元に恋をするというのは日本だけの現象かと思いきや、アメリカでも一緒なのですねえ。もう少しITが進化したら、本当にこういう世界が来そうで、なんとなく怖い気もします。

　作品情報　２０１３年アメリカ映画　監督：スパイク・ジョーンズ　出演：ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、スカーレット・ヨハンソン（声）　上映時間：126分　評価★★★★（五段階）　鑑賞場所：ヒューマントラストシネマ有楽町、鑑賞日7月4日　2013年劇場鑑賞111本目　



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　【ストーリー】
　手紙代筆業のセオドア（ホアキン・フェニックス）は、妻キャサリン（ルーニー・マーラ）と離婚調停中で、傷心のまっただなか。ある日、彼は最新鋭の自立型OS「OS１」を自宅のPCにインストールしたところ、サマンサ（声・スカーレット・ヨハンソン）という女性の声が聞こえてきた。

　理知的で機転も利き、そしてセクシーなサマンサに彼は次第に惹かれていく。やがて、二次元のOSを恋人にすることによって、セオドアはかつての明るい自分を取り戻し、仕事にも自信をつけていくが…

　【感想】
　Siriとの会話をユーモラスに楽しみ、退屈しのぎなどに使っている人も多いでしょう。もっと、完璧な人工知能（AI）ができたときにどうなるのか、ファンタジーのようで、寂しい現代人の本質をつく寓話のように思えます。まあ、これまでも電話を使ったものがあるのだから、AIと性的な関係が出来ても不思議ではないのかもしれません。

　ちょっと意外だったのが、セオドアは美人の幼馴染と結婚して、近所に住む元カノ（エイミー・アダムス）とも友人関係を保っていること。仕事も評価されており、いわゆるリア充なのです。にもかかわらず、AIを恋人にしてしまうというのは、単なるオタクな変人だけが陥るのではなく、もっと幅広い層の人間が本質的な寂しさを持っているということを明らかにしています。

　同時に、技術の進歩はいったいどこまでいくのだろうという、空恐ろしさも感じてしまいます。だって、機械を恋人にしても、子供が産まれるわけはないのですから、そういう人間が増えれば増えるほど、人口は減少していくわけです。また、AIとの会話は基本的には１対１であり、街中で携帯画面をみながらブツブツ歩いている姿は、不気味でしかありません。すでにスマホ端末によって、そういう傾向がでており、こんな動画をみると、https://www.youtube.com/watch?v=OINa46HeWg8　ちょっと怖くなるのですが、みなさんどうでしょうか。

　スピルバーグの「AI」とか、「シモーヌ」とか、これまでも同種のアイデアがあったと思いますが、今までのものは、相手が機械であっても、ロボットなり、ホログラムなりの実態があったわけです。本作は声だけはするけれど、実態はなにもない。そういうものとも恋仲に陥れるというのですから、非常に寓話的な作品といえましょう。「マルコビッチの穴」のスパイク･ジョーンズ監督だから、こんな奇想天外なアイデアができたのでしょうか。ラストも想定外でなかなかよかった。

　ホアキン・フェニックスはかつての美少年が年相応の40歳近い役にはまっていたのでびっくりしましたが、AIに惚れるという奇想天外の設定をうまくこなしていました。また、声のスカーレット・ヨハンソンは、若干ハスキーがかったところがいかにもセクシー。日本語吹き替えの場合、下手にアニメ声の声優を配しないで、こういう大人の女性にやらせてほしいなあ。原田知世とかがあうかもしれません。