2014年07月14日

怪しい彼女

 笑って泣ける韓国コメディの傑作。70歳の老女が20歳に若返るという設定で、老いを背景にすえることで、単なるコメディからいちだんと深みをましています。しかし、韓国特有の自分さえよければいいというところが、どうしても鼻についてしまったのと、おばあちゃんがあまりにもうるさすぎたのが減点材料でした。

 作品情報 2014年韓国映画 監督:ファン・ドンヒョク 出演:シム・ウンギョン、ナ・ムニ、ジニョン 上映時間:125分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜、鑑賞日7月12日 2013年劇場鑑賞115本目



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 【ストーリー】
 口が悪くて、バイタリティあふれる70歳の老女オ・マルスン(ナ・ムニ)。女手一つで育てた自分の息子ヒョンチョル(ソン・ドンイル)が大学教授になったのがうれしくて、いつもベッタリしている。そのため嫁のエジャ(ファン・ジョンミン)が鬱病で倒れてしまい、家族はマルスンのいびりのせいだと、施設にいれることを検討した。

 ショックを受けたマルスンは街へ飛び出し、自分の遺影を撮ろうと写真館に飛び込む。そこで、50年は若く見えますよといわれた彼女が写真館を出ると、なんと自分の20歳のころ(シム・ウンギュン)に若返っていた。驚いた彼女はあこがれのオードリー・ヘップバーンにちなんで、オ・ドゥリと名乗る。そこへ、一家の中ではおばあちゃん子だった、ジハ(チニョン)が一目ぼれ。自分のバンドに誘い入れる。若かったころの歌手になりたかったという夢がかなったかに見えたマルスンだが。

 【感想】
 冒頭、女性の一生をボールにたとえるのが面白かった。10代はバスケットボールで、空に上がったボールに男たちがみんなで手を伸ばす。20代はラグビーボールで、男たちがぶつかりあって取り合おうとする。でも高齢者はドッジボール。みんな避けようとする。 マルスンは貧しい母子家庭からのし上がり、子供を大学教授にまでさせた。大変な苦労をして、人を陥れるようなこともした。だから、押し出しが強く、がさつなのだけど、それは立派に子供を育てた代償でもあるのです。けれども、現在のマルスンをみれば、意地悪ばあさんとして周囲から煙たがられ、おさななじみのパク(パク・イナン)、ヒョンチョル、ジハぐらいしか味方がいない。

 高齢者は70年かけて作った人格をそう簡単に変えるわけいきません。また、若い人からみれば、高齢者はとろくて、汚い対象でいつかは自分がそうなるということをわかっていません。まず若返ったときに、体操をして、自分の身体が柔らかくなっているのに驚くシーンがあるけれど、高齢者のつらさというのを実感しました。

 ドゥリは20歳の心を持つ70歳なので、そのギャップがよくわかる。今までは避けて通られてきた自分がたちまち、ナンパ男たちにちやほやされる。けれども、彼女は自分を見失いません。テレビ局のプロデューサー、ハン(イ・ジヌク)を、サンマ?を突きつけて追っ払ったシーンは爆笑しました。そして、若いころに夫と死別して、苦しい生活をした彼女は、自分の若いころだった夢の歌手になりたいと、もう一度人生をやり直そうという気持ちが素直に伝わってきます。ハンは、ドゥリが若いにもかかわらず、人生を経験したようなソウルのこもった歌を歌うのに魅了されてしまいます。このへんもよくできたシナリオ。

 同時に、高齢者のつらさも忘れることができません。自分だけ若返ることに対する後ろめたさみたいのも、内心思っていたのではないでしょうか。老いと若さ、人間がだれしも経験することでもあり、クライマックスのヒョンチョルとの会話は思わず涙がでてしまいました。

 映画が成功したのは、シム・ウンギュンの演技のたまもの。20歳なのに70歳という役柄をみごとにこなしており、顔も声もちがうのに、マルスンが若返ったといわれても納得してしまいます。さらに、まさにソウルのこもった歌の数々。韓国の70年代のヒットソングだそうですが、初めて聴く僕にも、じーんと感動がともりました。日本の20歳前後の歌手で、ここまで説得力のある歌手はいるかなあ?

 韓流ブームが去りましたが、韓国映画の底力はまだまだあると感じられた作品でした。
posted by 映画好きパパ at 07:03 | Comment(0) | TrackBack(12) | 2014年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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