2014年07月29日

リアリティのダンス

 「エル・トポ」など前衛的な作風で知られる、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の23年ぶりの作品。84歳の監督とは思えない斬新で抽象的な世界に、ホドロフスキー初体験の僕は酔いしれてしまいました。

 作品情報 2013年チリ・フランス映画 監督:アレハンドロ・ホドロフスキー 出演:ブロンティス・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、イェレミアス・ハースコヴィッツ 上映時間:130分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 鑑賞日7月24日 2013年劇場鑑賞123本目








 【ストーリー】
 84歳の映画監督、アレハンドロ(本人)は、年をとっても自分のなかに純粋な少年の魂がやどっていることに気づいていた。幼少のアレハンドロ(イェレミアス・ハースコヴィッツ)は、チリの田舎町トコピージャで、厳格な父ハイメ(ブロンティス・ホドロフスキー)と、優しい母サラ(パメラ・フローレス)と暮らしていた。

 だが、内気で臆病なアレハンドロは、ユダヤ人ということで級友からもいじめられ、ハイメは歯がゆかった。息子を鍛えなおそうと、彼は歯の治療を麻酔なしで行わせたり、アレハンドロ自慢の長髪をばっさり切ってしまうなど、思い切ったスパルタ教育を行う。一方、当時、チリはイバニェス将軍(バスティアン・ボーデンホーファー)の独裁化にあり、共産主義者のハイメは、将軍暗殺こそがチリを救う道と信じていた。

 【感想】
 冒頭から幻想的なシーンの数々が繰り広げられます。なにしろ、パメラ・フローレスはオペラ歌手であり、サラのセリフはすべてオペラ調に歌って話されるのです。また、アレハンドロが鉱山事故で両手を失った男に親切にするのをみて、ハイメが怒るシーンでは、両手両足を失ったりした大勢の身体障害者に囲まれて、ハイメが切れてしまうなど、冒頭であった昔のサーカスのような見世物的な映像が繰り広げられます。海辺で石を投げたアレハンドロに海が怒って、大量の魚を噴出させるなど、次から次へと、よくもこんな斬新なシーンを思いつくなと思わせるものばかり。

 前半はアレハンドロの成長、中盤からはイバニェス将軍を狙うハイメの行動が映画の主軸になるのですが、そのキーとなる、独裁者たちに命を狙われるが伝染病に罹患して瀕死のハイメを、サラの愛情で救うシーンは、ちょっといくらなんでもやりすぎでは、というシーンの連続で思わず笑ってしまいました。また、行者のしゃべる謎の言葉は般若心経だそうで、まったく奥が深い

 ただ、冒頭とラストの哲学的なセリフもそうなのですが、84歳になって、人生の幼少時を振り返ったとき、幼い自分にとっては世の中は困難ばかりにみえるけれど、自分を支えてくれる人が確かにいて、失敗も成功もあったからこそ、今の自分があるという思いが素直に伝わってきます。過去の自分へのいたわりというのは、いくつになっても必要で、なおかつ未来の自分が現在の自分をいたわってくれると考えれば、人生捨てたものでないと思います。

 名前を見れば判るけれど、ハイメ役のブロンティス・ホドロフスキーは、アレハンドロの実の息子で、ほかにも、重要な役にホドロフスキーの息子2人が出演しています。こうした家族の目にみえないつながりというのも大事にしたかったのかもしれません。

 徹頭徹尾、抽象的な作品で、本来だったらこういうのは大の苦手なのですが、あまりにも意表をつく展開の連続で最後まで楽しく見られました。苦手だろうと敬遠していたホドロフスキーの過去作にも挑戦してみようかなあ。
posted by 映画好きパパ at 06:28 | Comment(0) | TrackBack(5) | 2014年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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