2014年08月07日

この空の花 長岡花火物語

 大林宣彦監督が、反戦への思いのたけをつめた作品で、従来の映画の作法を無視して、独特の感性で描いた素晴らしい傑作になっています。最新作の「野のなななのか」よりもとっつきやすいこともあり、映画館で見たかったとしみじみ思いました。

 作品情報 2012年日本映画 監督:大林宣彦 出演:松雪泰子、高嶋政宏、猪股南 上映時間160分 評価★★★★★(五段階) 2014年DVD鑑賞15本目



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村

 【ストーリー】
 天草のローカル新聞記者の玲子(松雪泰子)は、学生時代の元カレで長岡で高校教師をしている片山(高嶋政宏)から久しぶりに手紙をもらった。そこには、高校で生徒たちが「まだ戦争には間に合う」という舞台を行うとあり、さらに、「長岡の花火はお祭りではなく、追悼、復興の花火なので見に来てほしい」という言葉にひかれて、長岡を訪れることにした。

 舞台の脚本を書いた女子生徒、花(猪股南)のことを、片山は見覚えが無かった。彼女は戦時中のことは詳しいのに、最近のことは知らないという奇妙な少女だった。玲子は長岡で現在と過去をつなぐ、不思議な世界に巻き込まれてしまう。

 【感想】
 映画という表現がいかに自由かというものを実感させられる作品であり、日本人から戦争の記憶が風化しつつあるなか、戦争のことをしっかりつたえなければならないという思いにあふれた作品。一言で言うと、化け物のような作品でした。このような映画を見られることは、映画ファンにとって至福のことでしょう。

 長岡は、戊辰戦争、長岡空襲、中越地震と大きな被害に何度も遭っています。また、原爆の模擬弾も落とされるという被害もありました。しかし、「米百俵」の精神や、復興の証である長岡の花火大会であるように、そのたびによみがえってきました。日本国自体が、戦前のことを切り捨てて復活したのと違い、ここ、長岡の地では歴史が現在へ息づいています。そのことは、おそらく日本本来の風土であり、戦後、アメリカンナイズされた部分というのは、表層的でしかすぎないと実感させられました。

 現在と過去を行き来するというのは、大林監督のお手の物。しかも、もともとCMクリエイターだったらしく、原色を多様したド肝を抜かれるような表現があちこちにあります。また、とにかく監督の自由自在に作られた作品で、例えば、柄本明演じる老花火師、野瀬が戦争の悲惨な思い出を語ったあと、野瀬のモデルになった人物が実名で登場して、今の思いを語ったりします。舞台と長岡の大空襲をオーバーラップするシーンは明らかに作りものの、80年代のファミコンを思わせるようなCGを使うことで、かえってこちらの想像力を書き立てます。

 クライマックスの舞台のシーンは、パッションあふれる大林監督の気迫の表現に、見ているこちらも全身全霊で受け止めなければついていけません。そして、戦争が何の罪の無い人たちを傷つけるという残酷さを改めて実感させます。そもそも「まだ戦争には間に合う」とはどういうことか。大林監督は正解をだしません。僕自身、戦争をとめようという思いがみんなで強めなければならず、そうなれば、まだ次の戦争には間に合うというように解釈しましたが、どうなんでしょうかね。

 単に戦争が悲惨だ、で終わらずに、2011年に大水害で見舞われた長岡市で、「お祭りではなく、追悼、復興の花火だからやらねばならない」と実現した市長(村田雄浩)の決断や、山本五十六の出身地であることを契機に、パールハーバーで友好の花火大会をしようという未来につながる動きもでています。それは中越地震の被害から立ち直っている場面を紹介する場面もそうで、東日本大震災で、世界が日本人の強さに感嘆したように、大林監督も日本人の本来ある美徳を信じているということでしょう。

 松雪、高島は大林映画では珍しい組み合わせだが、村田、尾美としのり、原田夏希といった常連たちが脇を固めてアンサンブルを奏でている。そして、新人女優を見出すことでは天才的な大林監督のめがねにかなった猪股のフレッシュな演技もわすれられません。まさに大林マジックによるワンダーランドを体感できる作品でした。

posted by 映画好きパパ at 06:07 | Comment(0) | TrackBack(2) | 2014年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

大林宣彦監督『この空の花 ―長岡花火物語』
Excerpt: 『この空の花 ―長岡花火物語』出演 : 松雪泰子、嶋政宏、原田夏希、猪股南(新人)、富司純子、寺島咲、尾美としのり、柄本明、他多数!監督:大林宣彦物語・地方紙記者の遠藤玲子は、新潟県長岡市で教師をす..
Weblog: 映画雑記・COLOR of CINEMA
Tracked: 2014-08-07 13:55

『この空の花 長岡花火物語』
Excerpt: ----『この空の花』って、もしかして花火のこと? 「そうだよ。 この映画は、新潟の長岡で毎年開催されている“花火大会”をモチーフに、 現在(いま)の日本を見つめた、大林宣彦監督の野心作。 試写の案..
Weblog: ラムの大通り
Tracked: 2014-08-12 14:43