2014年08月23日

太秦ライムライト

 時代劇の斬られ役として有名になった福本清三の初主演作で、時代劇への愛情あふれる作品。カナダのファンダジア国際映画祭で作品賞を受賞し、凱旋公演されていたので見に行きましたが、こういう純日本的な映画が海外で評価されるのはうれしいですね。

 作品情報 2013年日本映画 監督:落合賢 出演:福本清三、山本千尋、松方弘樹 上映時間104分 評価★★★★(五段階) 上映時間 鑑賞場所:シネマート六本木 鑑賞日8月18日 2014年劇場鑑賞137本目



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 【ストーリー】
 時代劇のメッカとして知られた京都の日映太秦撮影所。だが、時代劇は年々斜陽となり、国民的時代劇の江戸桜風雲録までが、新任プロデューサーの川島(合田雅吏)があっさり打ち切ってしまった。そのため、斬られ役として長年時代劇で活躍した香美山(福本清三)ら大部屋俳優たちも、仕事がなくなってしまう。

 そこへ、新人大部屋女優のさつき(山本千尋)が殺陣を習いに来た。最初は断った香美山だが、熱心に頼み込む彼女の情熱に負け、稽古をつけることになる。美貌とアクションの出来るさつきは、新型時代劇のアクション吹き替えからヒロインに抜擢。東京でスターの道を歩み始める。だが、そのころ香美山は…

 【感想】
 僕が子供のころは時代劇は毎日のようにやっていましたが、最近はまったくなくなりました。勧善懲悪で、正義の味方がバッサバッサと下っ端を切って、最後に悪の親玉をやっつけるなんてストーリーを古臭いと思う人が多いのでしょうね。だから、最近は時代劇をやっても人情物だったり、JINのようなSF人間ドラマが主流です。でも、時代劇の需要がないわけでないのは「るろうに剣心」や「超高速参勤交代」がヒットしているのをみれば分かるわけで、伝統とアイデアのひねりを組み合わせれば、まだ何とかなるような気もします。

 さて、本作は福本以外にも大部屋俳優が大勢でており、劇中劇の時代劇撮影シーンは、普段それほど時代劇をみない僕にとってもワクワクしました。斬られ方のほうが、斬るほうよりも工夫しなければならないとか、その一方で、スポンサーと視聴率ばかり気にしているプロデューサーや、時代劇へのリスペクトがない軽薄なアイドル、そして、CGを使って刀すら使わない撮影シーンなど、負の部分もばっちり映しており、一映画ファンとしても考えてしまいます。

 そんななか、時代が変わろうとも演技者としての信念を曲げない香美山の姿は、実際の福本と通じるものがあるのでしょう。セリフ回しは朴訥としているが、殺陣で彼がいるだけで、現場の雰囲気ががらりと変わるのはさすが。単に古い伝統を残せというのではなく、タイトルのネタ元となったチャップリンの「ライムライト」同様、古い世代が新しい世代へどうやって受け継ぐかをきちんと描いており、福本のたたずまいそのものが感じさせます。

 また、説明的なセリフがなくても、だれもいない家で、福本が質素な夕食をとり、つくろいものをしているだけで、落魄した風景が伝わってきます。若手監督とアメリカ人カメラマンといった組み合わせだからこそ、かえって新鮮にいったと思います。

 特筆すべきはヒロイン役の山本千尋の凛とした美しさ。柴咲コウの若いころを思わせる美貌に、本人が太極拳のジュニアチャンピオンというまさにアクションにぴったりの体力があり、オーラもただものではありません。映画のクライマックス、「江戸桜風雲録」の主役、松方弘樹と彼女、そして、福本清三の立ち回りは、時代劇史に残る名場面になるのではないでしょうか。
posted by 映画好きパパ at 11:11 | Comment(0) | TrackBack(7) | 2014年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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