作品情報 2011年韓国映画 監督:ファン・ドンヒョク 出演:コン・ユ、チョン・ユミ、チャン・グァン 上映時間125分 評価★★★★★(五段階) 2014年DVD鑑賞26本目
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映画リンク集-シネマメモ 【ストーリー】
韓国の田舎町の聴覚障害者学校にソウルから赴任した新人教師のカン(コン・ユ)。着任早々、児童たちが怯えた表情をみせているのに気づく。やがて、教師たちによって、体罰が日常的に行われているうえ、校長(チャン・グァン)をはじめ、教師たちが女子児童に性的虐待を加えていることを知る。
偶然知り合いになった人権センターのユジン(チョン・ユミ)とともに、告発に立ち上がったカン。しかし、校長と双子の行政室長(チャン・グァン)は街の有力者であり、警察も買収していた。ようやく、ソウルのマスコミを動かして逮捕させるものの、裁判で証人たちも買収され、校長たちに有利なように証言を捏造し…
【感想】
日本でもかつて、「聖者の行進」というドラマで障害者虐待を生々しく描いていたし、同様の事件はおきても不思議ではないのだけど、韓国人特有のねちっこさと、司法・警察がまったく機能しない状態で田舎町の有力者が権力をほしいままにしているというのは、先日みた「野良犬」同様、韓国の恐ろしいところ。日本ではまずかんがえられないでしょう。
しかも、校長や虐待教師らの顔が本当に悪人顔なんですよねえ。邦画だったらむしろ、上品そうな顔の役者を配するかもしれないけれど、観客がカンやユジンたちと同じ目線で、悪役を絶対に許せないとおもわれるには、こちらのほうが影響力があると思います。実際に見ていて吐き気がしてきました。
また、うまいのが、カンもユジンも欠点がある人間として描かれていること。カンは昇進などのえさと、恫喝の双方から、一度は目をつぶろうとします。また、ユジンも大酒のみのうえ、思い込みが激しく、周囲からは敬遠されています。しかし、人として最後の一線を越えないところでは共通しています。特に、カンが一度は校長に贈り物をしようとして、それでも体罰にみかねて行動を起すシーンは、深く考えさせられました。だれもが、ハリウッド映画のヒーローのように強くは無いけれど、弱い人間でも、守らなければならないものがあるのです。
さらに、子役たちの怯えた表情は映画とは思えません。トラウマにならないのかと見ているこちらが心配するほど。それだけに、こんな無力な子供たちを、権力でほしいままにする大人への怒りがふつふつとわいてくるのですよね。この純真な瞳の告発になぜ、大人は答えられないのか。やるせない思いでいっぱいになります。
また、裁判ドラマとしても素晴らしいできばえ。何とか事件をもみけそうとする校長側に対して、素人であるはずのカンやユジン、そして何より子供たちが懸命に戦っていく姿をみていると涙がでてきそうになりました。
以下ネタバレです
校長側は証人の買収だけでなく、児童の保護者も買収します。性的虐待で弟が自殺した兄ミンス(キム・ヒョンス)の祖母も買収されました。しかし、祖母からすれば、子供夫婦は障害者の孫を残していなくなり、自分が生活することすらままならない、極貧ぶり。目先のカネにくいついたとして、だれが非難することができるでしょうか。しかも、それゆえにさらなる悲劇を産むのですから、とにかく、絶望したくなります。
裁判では示談がなりたったこともあり、校長たちは執行猶予付きの判決で実質無罪。抗議する障害者たちを警官隊が排除するシーンは、怒りと哀しみのあまり、息もできなくなりそうでした。
映画は韓国で大ヒットして、このために障害児童に対する虐待を取り締まる通称トガニ法という法律ができ、裁判も再度やりなおしになったそう。ただ、法律はともかく、映画で裁判がやりなおしになるというのも、法治国家の原則から考えると、不思議な国だとつくづく思います。
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