作品情報 2014年イギリス/ブラジル映画 監督:スティーブン・ダルドリー 出演:リックソン・テベス、マーティン・シーン、ルーニー・マーラ 上映時間:114分 評価★★★★(五段階) 2014年試写14本目 1月9日公開
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映画リンク集-シネマメモ
【ストーリー】
ラファエル(リックソン・テベス)はブラジル・リオデジャネイロの巨大なゴミ捨て場があるスラムで暮らす少年で、ゴミを拾って生きている。ある日、ゴミ捨て場の中で財布を見つけた。大金が入っていることに喜んだ彼だが、手紙と暗号も一緒に入っていることに気づく。
そこへ警察の大部隊が現れ、財布の捜索をはじめる。どうやら重要なものらしいと、ラファエルは、友人のガルド(エデュアルド・ルイス)、ラット(ガブリエル・ウェイスタイン)と財布の謎を調べだす。だが、警察の指揮官のフェデリコ刑事(セルトン・メロ)に捕まったラファエルは拷問を受け、瀕死の重傷に。ラットはもうやめるように忠告するが、ラファエルは、つかまったときの警察の会話から、財布の秘密を解き明かすことが正しい行いであると信じる。こうして3人の命がけの冒険が始まった。
【感想】
ブラジルはオリンピックやワールドカップなどで華やかな一面がみられる一方、経済格差は日本なんかと比べ物になりません。これはブラジルだけでなく、第三世界のどこでもみられるもの。ゴミを拾って生きている少年たちがいる一方、権力者たちは腐敗まみれで金を使っているという構造になっています。
余りにも巨大な権力を前にすると、人は無力感に感じます。映画でも、スラムのガブリエル神父(マーティン・シーン)は警察に捕まったラファエルを釈放してもらおうと掛け合いにいきますが、警察にはかなわず、悲しい顔をするばかり。おそらくこれまで数々の挫折があったため、戦う気力がなくなったでしょう。しかし、少年であるラファエルはまだ挫折を知らず、自分の正しいと信じた道をどこまでも突き進もうとします。この姿がなんともまぶしい。
自分を射殺しようとするフェデリコに、最後にいうことはないかと聞かれたラファエルは「あなたに神の祝福がありますように」と告げます。どんなに貧しく、どんな状況にあっても、心の強い少年がいるということは、われわれ大人を勇気付け、かつ、しっかりしなきゃいけないと思わせます。
脚本が「アバウト・タイム」などを監督したリチャード・カーティスということもあり、伏線をうまくちりばめたうえ、爽快なラストへと導いてくれます。少年たちが何度も訪れる危機を、勇気と知恵と団結で切り抜けていく様子は、洋の東西を問わず大人を励ましてくれるのでしょう。貧乏な街の人たちが、彼らを手助けするのもいい。
試写会の前に「紙の月」をみて、両方の映画ともお金とは何かを考えさせられる作品なのですが、国も生活環境もはるかに違う本作のほうが、お金や富について真剣に考えさせられ、主人公たちに共感できたのが意外でした。
子供たちがポルトガル語で、英語をしゃべる神父や、神父の助手のオリヴィア(ルーニー・マーラ)とのコミュニケーションギャップもさもありなんと感心させられます。また、「シティ・オブ・ゴッド」監督のフィルナンド・メイレレスが製作協力していることもあり、ゴミ山の巨大なセットや、ブラジルのスラムを実にリアルに映し出せていました。