作品情報 2014年日本映画 監督:武正晴 出演:安藤さくら、新井浩文、早織 上映時間113分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:テアトル新宿 鑑賞日1月16日 2015年劇場鑑賞7本目
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映画リンク集-シネマメモ
【ストーリー】
実家にひきこもっている32歳の一子(安藤サクラ)は、仲の悪い妹の二三子(早織)が離婚でシングルマザーとなって帰ってきたことから大げんかになり、家を飛び出す。近所の百円ショップで働くが、そこは底辺のような場所だった。
常連のボクサー、狩野(新井浩文)が練習する姿をみるのが好きだった彼女は、ある日、自分の試合をみにこないかとチケットを渡され動揺する。彼の試合をみたとき、負け続けだった彼女の内部で何かが変わる。だが、その晩、彼女は思いがけないアクシデントに巻き込まれ…
【感想】
勝ち組、負け組と簡単にいわれるけれど、人生の敗者の怨念と這い上がろうとする執念がストレートに伝わる良作です。特に、最初は引きこもりで生きる意欲もなかった一子が、家を追い出されて自立するともに、ボクシングと出会うことで、自分の感情と欲望に気づいていきます。引きこもりのときのぶよぶよした体型から、ボクサーの引き締まった体型への変化も見事ですが、目つきや表情が全く違うのにも驚きました。安藤サクラ渾身の演技で、主演女優賞を総なめしているのも不思議ではありません。
登場人物がすべて人間的に弱く、嫌なやつなのに、後味が悪くないというのも希有な作品です。自分に自身がなかった一子もそうですが、二三子をはじめとする家族も機能不全に陥っているし、コンビニの店員も人間のくずばかり。さらに、本来だったら王子さまポジションにあってもおかしくない狩野も、最低の男です。でも、そんなぼろぼろの人間たちが、必死に生きる姿が滑稽でもあると同時に、生きることのすばらしさというのを伝えてきます。
ボクシングシーンも臨場感あふれるもので、泥臭く無様だけど、必死で闘う姿は観客の心を揺さぶるでしょう。世界チャンピオンたちを描いた作品ではないのでボクシングのレベルは低いのかもしれませんが、とにかく、負け組から脱出して、一つでも自分を信じることができるようにするものを見つけようとする執念にただただ感服するばかり。
安藤や新井の演技がうまいのはまあ想定内だったのですが、ちょっと前まで美少女で売っていた早織が、シンママ、ヤンキーで人間の底辺の役にはまっていたのもびっくり。また、同僚店員役の坂田聡の、まさに人間の屑ともいえる、でも実在感あふれる役作りや、店長役の宇野祥平のドロンとした沈んだ目つきなど、知名度はないけれど、はまり役ばかりのキャスティングにも敬意を表します。それだけに、ファンタジー的に浮いてしまった根岸の役柄は残念で、もっと出番がすくなければアクセントになったのにとつくづく思いました。
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