作品情報 2014年日本映画 監督:三木孝浩 出演:新垣結衣、木村文乃、恒松祐里 上映時間132分 評価★★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズ川崎 鑑賞日3月14日 2015年劇場鑑賞30本目
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【ストーリー】
その夏、長崎県五島列島の中五島中学校合唱部の生徒たちはざわめいていた。産休に入った松山先生(木村文乃)の代わりにやってきた、代用教員の柏木ユリ(新垣結衣)は、ものすごい美人で、しかも東京で活躍していたピアニストだというのだ。
だが、生徒たちの前に現れた柏木は、やる気がなく、ピアノを弾こうともしない。一方、彼女目当てに男子生徒が次々に入部を希望したがふざけてばかりで、合唱部の熱血部長のナズナ(恒松祐里)は、ついに怒りを爆発させる。そんななか、県の合唱コンクールの課題曲が「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」に決まり、柏木は生徒たちに15年後の自分に当てた手紙を書く課題を出す。
【感想】
今まで一番泣いた映画は、韓国映画の「ハーモニー」でした。これは、泣かせようというあざとさがありつつも、力負けで泣いてしまった感じです。しかし、本作は、本当に自然に涙があふれ出てとまらない。特に、心に傷を負ったり、疲れているときには、生きる希望も与えてくれる素晴らしい作品です。
ストーリーとしては、ありふれた話の羅列かもしれません。序盤がもたつく印象もあるので、作品の完成度としてもまだまだ。しかし、それゆえに、ありえなさそうな話を集めた「悼む人」とは段違いのリアル感をみせつけました。当たり前なのですが、子どもたちは大人にはいえない傷や悩みをもっていますし、大人は大人で、自分で抱え込まなければならない傷がある。でも、いつまでも、それに負けていてはダメで、少しでも前へ進むことが大切。そんな作り手の思いが素直に伝わってきます。
ユリにとって15歳の自分の気持ちは、今となっては(30歳?何歳の設定なんだろう)重たいものでしかありませんでした。だから、生徒たちのまっすぐな思いや、歌への情熱も、最初は冷ややかにみていた。しかし、歌の練習を通じて、生徒たちにも悩みがあることを思い出し、教師として、人生の先輩として彼ら、彼女らを支えていこうとする。最初の能面のような表情が、徐々に崩れていき、時折笑顔がみせるようになる様子は本当にナチュラルで、がっきー、実は演技派?とまで思ってしまいました。
また、子役の演技が素晴らしい。なまじテレビで見かけるような有名子役でなく、本当に素朴な島の子どもたちが集まっているような感じをうけ、そのなかで親との葛藤や将来への不安といった子どもたちならではの悩みと、それをはねのけて前へ進もうという力強さを見事に描き出していました。客観的にみれば、何も問題は解決していないかもしれません。けれども、合唱を通じて培った一夏の思い出は、困難なときに支えてくれる何よりも宝物といえるでしょう。
五島の美しい風景にも息をのみました。隠れキリシタンがいた歴史のせいか、教会が普通に生活に溶け込んでいるのも驚きますし、木村や桐谷健太といった大人の俳優までしっかりと方言になじんでいるのも、いい。そして、予告編でも流れますが、緑の草原で、強い風に吹かれながら、一同が練習するシーンは、最近の邦画で屈指の美しさで、まるで風景画のようでした。
そして、音楽の偉大さ。「手紙」がここまで、子どもたちの合唱にあうとは思いませんでしたが、もともと五島の中学を訪れたアンジェラ・アキが作った曲なのですね。また、ベートーベンの悲愴も効果的。三木孝浩監督は、これまで良い作品は作るけど、今一つ突き抜けない感じがしましたが、本作で本当にノックアウトされました。ああ、15歳の自分に戻って人生やりなおしたいなあ。
韓国映画のハーモニーも泣けるので、機会があればどうぞ
アンジェラアキのPVも素晴らしい
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1年生を集めるためとかで、中庭で合唱を始める時の足の位置の取り方が武士が刀を構えるみたいにスチャっと取る気持ちよさみたいなのもあって、一つ一つ丁寧に撮られてるなあと思いました。