2015年04月15日

おみおくりの作法

 原題は「STILL LIFE」。邦題は数年前のヒット作「おくりびと」を意識しており、中身的には先日公開された「悼む人」とかぶる部分もありましたが、英国らしい渇いたユーモアと突き放しつつも暖かさを感じる作風で、個人的にはこちらが好みです。

 作品情報 2013年イギリス、イタリア映画 監督:ウベルト・パゾリーニ 出演:エディ・マーサン、ジョアンヌ・フロガット、カレン・ドルーリー 上映時間91分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:新宿シネマカリテ 鑑賞日4月8日 2015年劇場鑑賞44本目



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 【ストーリー】
 ロンドン・ケニントン地区の中性の民政係、ジョン・メイ(エディ・マーサン)。彼の仕事は孤独死した人の遺族に連絡を取り、身寄りがいない場合は遺品を整理して、葬儀、埋葬すること。死者の生前の宗教に合わせて葬儀を執り行ったり、弔辞をわざわざ作ったりして、悼んでいた。

 しかし、上司から無駄な仕事だと決めつけられ、リストラ対象になる。最後の仕事はメイの近所の住人、ビリーの身寄りを見つけること。隠れるように住み、近所に知り合いのいなかったビリーの家には1冊のアルバムがあり、彼の娘の幼い頃の写真が貼られていた。最後だからきちんとしようと、わずかな手がかりからビリーの過去を探っていく。

 【感想】
 「悼む人」の感想に書きましたが、災害や事件で巻き込まれて亡くなった場合は、多くの人の記憶に残ります。しかし、町の片隅でひっそりと孤独死した人のことをだれが覚えていましょうか。メイがせっかく遺族を見つけて連絡をとっても、生前に嫌な思い出があるのか、遺灰の引き取りを拒まれるケースもしばしば。メイだけは、彼らの写真を丹念にアルバムに貼り、ふさわしい弔辞を考え出す、唯一の存在でした。

 そのメイも、孤独で友人がおらず、几帳面な小役人として日々を送っています。仕事関係の人も皆彼のことを「ミスターメイ」と堅苦しく呼び、近所の人との会話もありません。知性と教養あふれて、死者を悼む優しい心を持っているのに、コミュニケーションは何とも難しいものかと実感させられます。しかも、リストラされたあとの後任は、ろくに調査せずにさっさと仕事をすることで上司から評価されるのですから、彼自身、自分の仕事は何だったと思ってしまったでしょう。

 そして、最後の仕事となったビリーの過去を探る旅。ビリーは粗暴で刑務所にも何回も入った乱暴者でした。彼の元親友も、元恋人も、娘ですらビリーと今更かかわりをもつことを拒絶します。しかし、メイは決してあきらめることなく、ビリーの生前ゆかりのあった人をたどっていきます。人間、どんなに嫌な人物であっても、どこかに良い面、良い思い出があるはず。そんな複層的なことを丹念にえぐりとっていきます。

 同時に、最後の仕事でもあり、ビリーの行動にも影響されたのか、メイの行動もちょっとずつ変わっていきます。あっさり調査を終了しようとしたけれど、普段は飲まないココアを駅の売店で飲んで翻心したり、普段は地味な黒のスーツにネクタイだったのが、青いセーターを着たり。メイにとっても、死者に一方的に向き合うのでなく、死者のために生者と真剣に向き合うことで、自らが成長していきます。

 それだけでは単なるウェルメイドな話ですが、イギリス映画らしいひねりがきちんとあり、大人の映画だなあとしみじみ。号泣はしないけれど、暖かい涙がほろりと出てくる感じの作品でした。同時に、人は最後に死ぬのだから、そのときは笑って死ねればいいなあということも実感しました。
posted by 映画好きパパ at 00:26 | Comment(0) | TrackBack(10) | 2015年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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