作品情報 2014年韓国映画 監督:シム・ソンボ 出演:キム・ユンソク、パク・ユチョン、ハン・イェリ 上映時間111分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズ川崎 鑑賞日5月2日 2015年劇場鑑賞52本目
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村
【ストーリー】
1998年、アジア金融危機で不況にあえぐ韓国の漁村。漁船「チョンジン号」は出漁したものの、新人船員ドンシク(パク・ユチョン)のミスでウインチが故障してしまう。かつては港一番の腕を誇った船長のカン(キム・ユンソク)は船を修理しようとするが、資金もなく船主からは廃船にするように迫られる。
窮地に追い込まれたカンは、報酬の高い裏の仕事に手を出すことに決める。中国から不法移民を密入国させる仕事だ。嵐の夜、中国船から数十人の密入国舎を受け入れたチョンジン号に乗り移る際、ホンメ(ハン・イェリ)という若い女性が海中に転落してしまう。ドンシクが命の危険を顧みずに荒海に飛び込み、ホンメを助けた。徐々に惹かれ合う2人。だが、それは大きな悲劇の始まりだったのだ…
【感想】
実際にあった事件を元にしており、「殺人の追憶」の脚本で知られるシム・ソンボ監督が緻密な人物描写と、ほんの些細なことから不幸の連鎖が始まり、ついにはどん底に落ちてしまう人間の悲しさ、愚かさをきっちりとスクリーンに映し出しました。後半は息も詰まりそう緊張した場面が続き、正直、無料でみられるからといっても、もう一度観るのはごめんです。
陸の上では目の前で妻に浮気されても文句一ついえず、船主にごまをすって給料を前借りするみじめなカン。それが、船の上に出たら絶対的な権力者として君臨します。カンにとって、陸上での生活は仮の姿で、チョンジン号だけが自分の生きる場所でした。同時に、家長として、船員たちは自分の子供であり、自分に従っている限りはかわいがります。しかし、少しでもチョンジン号に害をなす可能性があるものには容赦なく襲いかかる。船員が自分に口答えするのも許しません。
この辺の暴力性は韓国映画の長所。言葉はわかりませんが、韓国語でヤクザみたいな体格をしたカンに目の前で怒鳴られたら、ちびってしまいそうなぐらい怖い。この2面性がのちのち映画のなかで生きています。すなわち、陸の常識というのが、チョンジン号では通用しないし、それを当たり前だと彼らは思っているわけです。
こういう閉鎖社会というのは結構あちこちにあります。そのうえ男だらけの社会へ、ぽんとホンメのような若い女性が放り込まれ、しかも、船員の間では最もヒエラルキーの低いドンシクと良い仲になった。日本以上に先輩、目上のしばりがきつい韓国なので、こういう行動を先輩たちが許さないというのも理解できます。そして、想像もつかない悲劇が彼らを襲います。彼らがとった行動もまた陸の常識では考えられないものでした。それはカンの執念が船員たちに乗り移ったようです。
閉鎖社会で徐々におかしくなる怖さは、ミストのスーパーマーケットの中も思い出させました。映像的にも韓国映画特有の痛い描写があり、アイドルのパク・ユチョン目当てにいくと厳しいかもしれません。それでも、韓国の暴力的な映画が好きならば、見逃すには惜しい傑作でした。
【2015年に見た映画の最新記事】
陸では妻の浮気現場に遭遇しても起こりもしない船長が船の上では「俺様」。
それに従う船員も個性的です。
1つのミスが船全体をおかしくさせていく様がスリリングに描かれていましたね。
ドンシクとホンメのラブシーンは見たくなかったな。
やはり船の上というのは独立した世界であり、陸に上がったカッパというのも
あるのですね。韓国らしい家父長制度が陸では時代遅れだけど、海では堅牢なものというのも印象的でした。