2015年05月06日

あの日の声を探して

 戦争に巻き込まれた少年の悲劇を丹念に追っていて、素晴らしい作品なのですが、ロシアが一方的な悪者になっている描写が多いとおもったところ、制作国にグルジアが入っていて納得しました。グルジアは、グルジア紛争を舞台にした映画「5デイズ」にも出資しており、プロパガンダがうまいな。もちろん、だからといってロシアの行為が免責されるわけではありません。

 作品情報 2014年フランス、グルジア映画 監督:ミシェル・アザナヴィシウス 出演:アブドゥル・カリム・マムツィエフ、ベレニス・ベジョ、アネット・ベニング 上映時間135分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズ川崎 鑑賞日5月2日 2015年劇場鑑賞53本目



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 【ストーリー】
 1999年、第二次チェチェン紛争が始まり、ロシア軍はチェチェンに侵攻した。9歳の少年ハジ(アブドゥル・カリム・マムツィエフ)は家の外で両親が惨殺される様子を目の当たりにしたうえ、逃げる途中、赤ん坊の弟を置き去りにせざるを得ず、ショックで口がきけなくなる。

 EU人権委員会の職員、キャロル(ベレニス・ベジョ)は現地調査のさなか、ハジと知り合う。飢え死にしそうだった彼に同情して、宿舎へ連れていき、保護する。周囲から敵視されて孤独なキャロルに、孤児となったハジは徐々になついていく。だが…

 【感想】
 メーンストーリーはハジとキャロルの物語ですが、サイドストーリーとして、ハジと同じく間一髪で難を逃れて(おそらく性的暴行はされているが)、ハジの行方を捜す姉のライッサ(ズフラ・ドゥイシュヴィリ)、そして、ロシアの気弱な青年、コーリャ(マクシム・エメリヤノフ)の物語が用意されています。

 この3本のストーリーを通じて、ごく普通の人々が戦争に巻き込まれることで、被害者にも加害者にもなる。結局、最も犠牲になるのは子供を中心とした民衆であるという戦場の真理を、ミシェル・アザナヴィシウス監督は真正面から描ききっています。アカデミー賞を受賞した「アーティスト」がロマンティックなストーリーだったのに対して、夢も希望も失ったつらい現実がこれでもかと繰り返されていて、スクリーンから何度も目を背けそうになりました。

 日本語タイトルの「あの日の声を探して」は、もちろん、ハジの失われた声のことをいっているわけですが、同時に、戦争の犠牲となった大勢の人々の声に耳を傾けようとしない、世界の大部分の人へも向けているわけです。実際、99年のチェチェンでこんなことが起きているというのは僕は知りませんでしたし、当時、マスコミで騒がれた記憶もありません。

 映画のなかでキャロルが必死で訴えても、ブリュッセルのEU本部に届かない様子が描かれていますが、結局、こうした弱者の声を探して聞こうという姿勢がなければどうにもならないことを表しています。象徴的だったのがキャロルが自分の好きな音楽をハジに聴かせようとして迷惑がられるところ。キャロルですら、ハジの内面の声を探そうとせず、自分の意見を独善的に押しつけているわけです。人間の理解とはなんと難しいことか。

 さて、戦争の犠牲者が子供や女性であるという映画は何本も作られていますが、この映画の大きな特徴は、それと同じだけの尺をコーリャにもとっているところです。ごく普通の内気な青年が、運の悪いことが続き、とうとう人格まで一変してしまった課程は、ロシア版フルメタルジャケットという感じでしょうか。彼の視点をいれたことで、物語の構造は大きく膨らんだといえましょう。

 戦争映画としても、「トゥモローワールド」ばりのワンカット長回しの市街戦シーンや、炎上する建物をバックにした野営といったシーンも印象的ですが、「フルメタルジャケット」のハートマン軍曹のような特定のいかれた指揮官がいるのではなく、軍隊は上から下まで狂っているという点をきっちりみせているのも、秀作でした。
posted by 映画好きパパ at 06:10 | Comment(0) | TrackBack(6) | 2015年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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