2015年05月08日

ソロモンの偽証 後篇・裁判

 前編はよくまとまっていたのに、後半になって失速してしまいました。これは、プロデューサー、監督、脚本あたりの責任だと思います。小説と映画は違うから別に小説通りのストーリーにする必要はありませんが、なぜ、このタイトルを映画につけたのか考えてほしかった。前編の感想は→http://eigazukipapa.seesaa.net/article/416595520.html

 作品情報 2015年日本映画 監督:成島出 出演:藤野涼子、板垣瑞生、尾野真千子 上映時間146分 評価★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 鑑賞日5月3日 2015年劇場鑑賞55本目 



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 【ストーリー】
 クリスマスの朝、学校で2年A組の柏木卓也(望月歩)の遺体が発見された事件について、前代未聞の中学生による学校裁判が始まった。被告人となった不良リーダーの大出(清水尋也)も弁護人役の神原(板垣瑞生)の説得で出廷を了承した。

 事件を捜査した佐々木刑事(田畑智子)、事件当時の津崎校長(小日向文世)、担任だった森内(黒木華)ら関係者が次々と証人として出廷、本物の裁判さながらの論戦が繰り広げられるなか、検事役の藤野(藤野涼子)は、ある人物に対して違和感を抱く。そして、大詰めを迎えた法廷で、その人物を証人として出廷させる…

 【感想】
 前編の感想でも危惧したのですが、尺の都合か被害者である柏木をめぐる家族のシーンがばっさりカットされています。原作では重要人物だった兄は未登場。父(宮川一朗太)も映画では、ほとんどセリフすらありません。従って、事件そのものの構図が原作と大きく変わっているのに、なぜか、映画はそれ以外のところは原作に沿おうとしているため、かなり無理したストーリーになってしまいました。

 さらに、一番の問題は「ソロモンの偽証」のタイトル。原作者の宮部みゆきは「あえていえば、最も正しいことをしようとするものが嘘をついている」と説明しています。原作では法廷で、ある偽証が行われ、それがなぜ、何のために行われたのか、もっとも感動を呼ぶ証言でした。ところが、映画ではその部分がおかしなことになっており、「最も正しいことをしようとするものが嘘をついている」部分がなくなっているのです。

 正直、現代パートの尾野真千子らのシーンを大幅に削って、この2つについては、きっちりと描いて欲しかった。もしくは、2つをなくすのだったら原作から離れて独自のストーリーにして欲しかった。どっちつかずになったため、作品の完成度を大きく落としてしまい、素直な感動がなくなってしまいました。むしろ、制作者側がここで感動しろと押しつけたシーンの粗が見えてしまったといえましょう。

 結局、前編ではミステリーでなく本質的には人間ドラマと受け取れたのですが、後編では裁判中心なのでやむを得ないとはいえ、人間ドラマの部分がとってつけたかのようになってしまいました。特に、現代パートで「この裁判のあと、学校ではいじめはなくなった」とかいうセリフは生理的な嫌悪すらうけてしまいました。 俳優陣は中学生役、大人とも前編に負けずに好演していたので、残念です。
posted by 映画好きパパ at 06:40 | Comment(2) | TrackBack(11) | 2015年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
全く同じ意見です。
柏木君の家族について、特に兄は一切登場しませんでしたね。
あの家族がキーポイントなのに、そこを抜かしたら、なぜみんなが
柏木君を怖がったのか、全くわからなくなってしまいます。
前篇は割愛が多くても納得できましたが、後篇はいまいちだと思います。
Posted by ミス・マープル at 2015年08月25日 08:45
コメントありがとうございます。
せっかく前後編にしたのに、盛り込むべきシーンと
割愛すべきシーンを選び損ねているようなきがしました。
たとえば、尾野真千子の現代シーンに時間をさくよりは
柏木家族にあててほしかった
Posted by 映画好きパパ at 2015年08月25日 09:36
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