作品情報 2015年日本映画 監督:土井裕泰 出演:有村架純、伊藤淳史、吉田羊 上映時間117分 評価★★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 鑑賞日5月3日 2015年劇場鑑賞56本目
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【ストーリー】
小学校時代にいじめをうけていた、さやか(有村架純)は中高一貫の女子中に見事合格する。しかし、そこで初めて友達が出来たのがうれしくて、毎日、遊んでいたため成績は急降下。高2の時には偏差値30の学年ビリになっていた。
担任の西村(安田顕)から「クズ」呼ばわりされ、喫煙が見つかったためエスカレーター先の大学進学が無理となったさやかを見かねて、母親のあかり(吉田羊)は、個別指導の塾に通わせて大学受験させることに決める。塾講師の坪田(伊藤淳史)は「さやかちゃんはクズじゃない」ときっぱりいい、目標を慶應大学に定め、二人三脚で受験指導を始める。
【感想】
タイトルからして、結果もみえているし、ストーリーはすべて想定内。けれども、観客を最後まで飽きさせないで、明日への活力のようなものを与えてくれます。これは、テレビ畑で「今、会いにいきます」「ハナミズキ」などのウェルメイドな作品がうまい土井裕泰監督ならではのもの。
まず、細かな規律と学校の体面ばかり重視して、さやかの本質を観ようとしない西村と、さやかが知識がまったくないし、ギャルの格好をしていても、根は聡明で素直な部分を見抜いて、その長所を伸ばそうとする坪田との対比がうまい。人間だれしも何かしらの長所があるもの。それなのに、頭から全否定しては長所は死んでしまいます。坪田が笑顔でほめて伸ばす指導方法は、社会人としても参考になるのではないでしょうか。
家庭でも学校同様の問題があります。父親の徹(田中哲司)は女の子には興味が無く、息子の龍太(大内田悠平)にかかりっきり。さやかのことは問題ばかり起こすダメな娘と相手にしません。しかし、あかりはさやかだけでなく、徹に「甲子園」という夢を押しつけられ、窒息しそうな龍太のことも気に掛けます。自分の子供は奴隷だと思うようなダメ親というのは実際にいますが、ここでも、母親という救ってくれる存在がいました。家庭のありかたも顧みさせます。
坪田の教える勉強方法は非常にオーソドックスなもの。まず小学校のところに戻ってどこでつまずいたかをチェックしたうえ、徹底的な反復も使うと同時に、漫画日本の歴史などで勉強の楽しさを教えていきます。これも、通り一遍の勉強だけすればいいような学校との対比になっています。
もちろん、さやかがスランプに陥ったり、プレッシャーにつぶされそうになることもあります。しかし、さやかが必死に努力する姿をみかねた家族、友人たちの力が支えになります。特に、完全に機能不全に陥っていた家族が、さやかの受験への努力で再生していく様子は見事でした。
俳優ではなんと言っても有村架純の魅力が満載。同学年には本田翼、剛力彩芽、指原莉乃らがおり、同じ93年生まれに志田未来、能年玲奈、武井咲ら一線級の女優がそろっていますが、個人的には本作で有村がトップに抜き出た感じがします。また、伊藤の誠実さがにじみでる先生ぶり、吉田の暖かい母親ぶりもいいですけれど、悪役である安田の存在感がぴりりときいています。深みや深刻ぶったところがないので、浅く感じられるかもしれませんが、非常に愛おしい作品でした。
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