2015年05月24日

駆込み女と駆出し男

 観客に媚びず、でもエンターテイメントとしての基本はきっちりと果たしている邦画としては希有な作品。大泉洋をはじめ出演者はみな適役で、江戸末期の雰囲気がそのまま伝わってきそうでした。

 作品情報 2015年日本映画 監督:原田眞人 出演:大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり 上映時間143分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズ日本橋 鑑賞日5月20日 2015年劇場鑑賞67本目



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村
 【ストーリー】
 江戸時代、女性が自分から離婚するのは困難だったが、数少ない手段が、鎌倉・東慶寺に駆け込むことだった。そこで2年間修行すれば、離婚成立が認められる。東慶寺は徳川家康お声掛かりの寺であり、大名よりも権威があった。

 天保の改革で世の中が息苦しくなっているころ、江戸の医師見習いで戯作者志望でもある中村信次郎(大泉洋)は、幕府を批判して江戸に居づらくなり、親戚が営む東慶寺のご用宿・柏屋に居候することに。東慶寺に駆け込もうとしていた、江戸の豪商・堀切屋(堤真一)の妾、お吟(満島ひかり)と、酒乱の夫・重蔵(武田真治)の暴力に悩んでいた地元の鍛冶屋じょご(戸田恵梨香)と奇妙な出会いを果たしたことから、彼女たちの駆け込みを手伝うことに…

 【感想】
 謡や韻を踏んだ江戸っ子のべらんめえ調の啖呵が良く聞き取れず、最初はどうしようかと思いましたが、一言一言が分からなくても、当時の雰囲気というのがよく伝わってくるので、こういう表現方法もありだと思いました。客に説明する台詞もあまりなく、最低限の日本史の知識がないとつらいかもしれません。主要人物は架空ですが、東慶寺の院代・法秀尼(陽月華)、南町奉行の鳥居耀蔵(北村有起哉)、南総里見八犬伝の作者、曲亭馬琴(山崎努)ら実在の人物が良い味をだしています。

 東慶寺は鎌倉時代にできた寺ですが、豊臣秀頼の娘で徳川家康の義理の孫(千姫の義娘)にあたる天秀尼が住持となり、家康の庇護を受けたことから、女性の駆け込み寺として認められました。会津40万石の加藤家のお家騒動の際、逃げ込んだ家老の妻を保護して、加藤家から守ったことでも知られています。駆け込んだ場合は、まずご用宿で夫婦双方の側から聞き取り、調停がつかなければ、2年間の修行となり、その間は肉食はもとより、男に近づくこともできません。2年間が過ぎると、東慶寺が夫側から離縁状をとり、はれて離婚になります。また、東慶寺の尼と寺役人は対立しており、住持は100年以上不在で、院代が事実上のトップになります。映画の舞台となった天保は江戸末期であり、町人の力が強くなり、文化は爛熟しましたが、幕府側は何とか立て直そうと、倹約令や思想の弾圧をはかっていました。

 江戸時代の女性は離婚が認められない弱さもある一方、精神や場合によっては体力でも男にひけをとりません。堀切屋や重蔵が女たちがいなくなり困惑するのも女性の力をみているようで小気味が良かった。さらに、腐敗は許さず凜としながらも、時代の変化にめざとく人情味のある法秀尼、普段は凡庸そうにみえながら東慶寺を守るためには非情とも思える手段をとれる柏屋(樹木希林)などに比べて、小市民しか過ぎない寺侍の石井(山崎一)、権力を振りかざすだけしか脳がない奉行の鳥居などが凡庸にみえてなりません。いつの時代も勝者は女なんですねえ。

 大泉洋は何もやっても同じような役柄が多く、それほど好みの俳優ではありませんでしたが、本作では軽口をたたきつつも、医者として、そして東慶寺を守るための真剣さとのギャップがぴたりとあい、一世一代の演技といってもいいのでは。陽月華との掛け合いは何度聞いても見応えがあります。お歯黒ぬって、現在の感覚では不細工なメイクにもなった満島の演技も相変わらず素晴らしい。

 かなりいろいろ詰め込みすぎの部分もあり、もう10分ぐらい長くとって、幕閣の陰謀シーンについてみたかった気がします。とはいえ、省略をうまく使った編集も素晴らしく、原田監督作品のなかではベストであり、ここ何年かの時代劇でもトップクラスの作品といえるでしょう。
posted by 映画好きパパ at 06:35 | Comment(0) | TrackBack(11) | 2015年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

セリフの聞き取りにくいとこだけが残念。(´・_・`)〜「駆け込み女と駆け出し男」〜
Excerpt: つい最近みた、「百日紅」も案外こんな感じの実写版ができたんじゃないのかな〜とか ちょっと枝葉。 サブタイトルにもちょこっと書いたんですけども、 セリフのやり取りがいかにも江戸というか、この作品..
Weblog: ペパーミントの魔術師
Tracked: 2015-05-24 10:39

『駆込み女と駆出し男』 2015年4月27日 東京国際フォーラムCホール
Excerpt: 『駆込み女と駆出し男』 をプレミア試写会で鑑賞しました。 本日の舞台挨拶はまたまた大泉洋の独壇場であった。 しかし伏兵がいた。 それは神野三鈴である。彼女は最初の挨拶から戸田恵梨香の母親と紹介をおっ..
Weblog: 気ままな映画生活(適当なコメントですが、よければどうぞ!)
Tracked: 2015-05-24 11:24

駆込み女と駆出し男 ★★★★
Excerpt: 劇作家・井上ひさしが晩年に11年をかけて執筆した時代小説「東慶寺花だより」を映画化。江戸時代に幕府公認の縁切寺であった東慶寺を舞台に、離縁を求めて寺に駆け込んでくる女たちの聞き取り調査を行う御用宿の居..
Weblog: パピとママ映画のblog
Tracked: 2015-05-24 14:53

『駆込み女と駆出し男』
Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「駆込み女と駆出し男」□監督・脚本 原田眞人□原案 井上ひさし(「東慶寺花だより」)□キャスト 大泉 洋、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名、陽月 華、樹木希林、   ..
Weblog: 京の昼寝〜♪
Tracked: 2015-05-28 07:34

試写会「駆込み女と駆出し男」
Excerpt: 女の、生きる道… 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201504230001/ ..
Weblog: 日々“是”精進! ver.F
Tracked: 2015-05-29 06:43

駆込み女と駆出し男 : あらすじまで駆け込み
Excerpt:  口永良部島の火山噴火、凄かったですねぇ。そして、BSでサンフレッチェの試合観ていたら、小笠原諸島西方沖でM8.5の地震。南海トラフに備えて、防災グッズなどでも用意しておかな
Weblog: こんな映画観たよ!-あらすじと感想-
Tracked: 2015-05-30 21:51

「駆け込み女と駆け出し男」 (2015 松竹)
Excerpt: 井上ひさし原作の縁切り寺のお話。監督の原田眞人は、前にもお伝えしたと思うけれども「どうしたらこんなに面白く書けるのか」とまで言われた伝説の映画評論家だった。彼の著作「ハリウッド映画特急」は、三十年..
Weblog: 事務職員へのこの1冊
Tracked: 2015-06-06 17:41

『駆込み女と駆出し男』が捧げたオマージュ
Excerpt:  唯一『駆込み女と駆出し男』の残念なところを挙げるとすれば、こんなに面白いのに上映時間が143分しかないことだ。やっぱり185分は欲しかった。  原田眞人監督が時代劇!?  本作のことをはじめ..
Weblog: 映画のブログ
Tracked: 2015-06-07 08:07

駆込み女と駆出し男  監督/原田 眞人
Excerpt: 【出演】  大泉 洋  戸田 恵梨香  満島 ひかり  樹木 希林 【ストーリー】 江戸時代、幕府公認の縁切寺として名高い尼寺の東慶寺には、複雑な事情を抱えた女たちが離縁を求め駆け込んできた。女たち..
Weblog: 西京極 紫の館
Tracked: 2015-06-07 20:39

駆込み女と駆出し男
Excerpt:  『駆込み女と駆出し男』を新宿ピカデリーで見ました。 (1)『夏の終り』で好演した満島ひかりが出演しているというので、遅ればせながら、映画館に行ってきました。  本作(注1)の当初の時点は天保12..
Weblog: 映画的・絵画的・音楽的
Tracked: 2015-06-16 21:40

駆込み女と駆出し男 (2015)
Excerpt: 原案は、井上ひさしが晩年に11年をかけて執筆した時代小説「東慶寺花だより」言ってしまえば、縁切り寺物語、ですね。女性から離縁できなかった時代の救済システムです主演の大泉洋が、すごくイイ味だしてて、満島..
Weblog: のほほん便り
Tracked: 2016-09-08 08:20