2015年06月11日

国際市場で逢いましょう

 韓国で史上2位の興行収入を上げた大ヒット作品。ストーリー、演出、SFXとエンタメとしての完成度はきわめて高く、びっくりしました。こういう作品を作れない邦画界は猛省するべきだと思います。

 作品情報 2014年韓国映画 監督:ユン・ジェギュン 出演:ファン・ジョンミン、キム・ユンジン、オ・ダルス 上映時間127分 評価★★★★★(五段階) 鑑賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 鑑賞日6月6日 2015年劇場鑑賞82本目 



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 【ストーリー】
 釜山の国際市場商店街で小さな雑貨店を営む老人、ドクス(ファン・ジョンミン)。頑固者で街の再開発にも協力せず、自分の店に固執している。

 1950年、小学生だったドクス(オム・ジソン)は朝鮮戦争に巻き込まれた。一家で避難する最中、幼い妹のマクスン(シン・リナ)の手を離してしまう。父(チョン・ジニョン)は、「自分が戻ってくるまで家長として母や幼い弟たちを守るように」と言い残すとマクスンを探しにいくが、父も妹もそのまま戻ってくることはなかった。

 父の言いつけを守るドクスは、母(チャン・ヨンナム)たちと釜山の親戚に身を寄せる。貧しい生活が続き、家族の幸せのため自らの夢は封印して、外国の炭鉱に出稼ぎにいく。そこで、看護師のヨンジャ(キム・ユンジン)と出会ったが、炭鉱で爆発事故が起き…

 【感想】
 朝鮮戦争から現代に至る韓国の激動の時代を、名もない庶民にスポットをあてて振り返る大河ドラマ。少年時の難民生活から始まり、貧困のなかで命がけの出稼ぎ、異国でのラブストーリー、ベトナム戦争への派遣、そして、経済成長。これだけ中身の濃い話をわずか120分強に納めたユン・ジェギュン監督の手腕にはただただ驚嘆します。

 また、ドクスをスーパーヒーローにしないで、どこにでもいるような男にしたのもすごい。現代のドクスは頑固じいさんで、近所の人間どころか、子供たちにも相手にされていません。また、若いころのドクスも、恋には奥手だけど純情で押し切られるタイプ。さらに、炭鉱夫、行商などお金になる職業ではありません。

 一番感心したのは、ベトナム戦争での描写。アメリカ軍の撤退で、協力者として処刑されそうな農村の女子供や老人が、ドクスの乗ったボートに避難してきます。実は、冒頭の朝鮮戦争時のドクスと一緒の構図。ところが、ドクスは最初、彼らを救おうとせず自分たちだけ逃げようとします。観客からすると、ドクスは自分が助けられた恩返しで、当然ベトナムの村人を助けるだろうと思いますが、一避難民であった少年にとって、当時、アメリカ軍がどうして避難民を救済したかは分からないんですよね。ドクスをどこにでもいそうな男にしたことで、良い意味でストーリーに変化がつきました。ラストも、ストーリー的に普通に泣かせるような映画ではしないことを示しており、脚本の工夫はお見事でした。

 そのドクスが家族のために自分を犠牲にしようという決断の数々は、同じ長男として涙がでそうになります。さらに、「痛みをうけるのは自分たちの世代で、子供たちでなくて良かった」という台詞がありますが、この世代の犠牲があったからこそ、今の若い世代は繁栄を享受しているのに、今では年寄りを邪魔扱いしているのは韓国も日本も代わりません。さらに、親の無償の愛を子供たちがどこまで気づいているのかも疑問です。

 予算配分もすごい。序盤の朝鮮戦争のシーンはハリウッド映画にも負けないようなSFXを使っており、なぜ邦画でこんな描写ができないのか不思議。さらに、戦場でもそうですし、炭鉱事故でもそうですが、エキストラまで含めた演出がものすごく、大スクリーンでみるべき作品でしょう。

 フォレストガンプのように、(冒頭、蝶が飛び回るシーンはフォレストガンプのオマージュでしょう)韓国の現代史にまつわる人物がちょっとずつ出てくるのも、韓国人にとってはうれしかったのでは。僕も韓国史をしっていればもっと楽しめたのに、と思えました。

 ファン・ジョンミンの演技についてはいうことがありません。青年期、中年期で別の俳優が演じているかと思えるほど、人生の積み重ねを表現しています。また、アメリカでも活躍しているキム・ユンジンがおばちゃんになりきっているのも結構、驚き。シュリの美人スナイパーもあれから20年近くたちますものねえ。ドクスの親友役で、韓国映画の名脇役、オ・ダルスが相変わらずのひょうひょうとした演技を見せており、重くなりそうな話にコメディー部分をいれて、うまくつなげています。また、東方神起のユンホが、1970年代の韓国のトップスター、ナム・ジンで登場。出番は短いけど、役柄もふくめて、印象的な演技をみせました。笑って、泣いて、感動してまさにエンタメ映画のお手本というような作品でした。
posted by 映画好きパパ at 06:39 | Comment(2) | TrackBack(8) | 2015年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そうなんですよね。
韓国での著名人が4名ほど出てくるのですが、あまりピンときませんでした。
自国民ならきっと思い入れも違って来たでしょうね。
ドクスがなぜ店を守ることにこだわったのかを知った時は涙が出ました。
それと離散家族の再会番組は、日本の中国残留孤児の件と重なって見えました。
Posted by ミス・マープル at 2015年11月09日 11:31
コメントありがとうございます。
フォレスト・ガンプを意識したんでしょうかね。
韓国人なら歴史上の人物としてだれでもしってるでしょうし。

それにしても、冒頭の朝鮮戦争の部分をみても、韓国のSFXのすごさと
予算の効果的な使い方はうらやましい限り。邦画でもこういう対策が
出てくるのをのぞんでます
Posted by 映画好きパパ at 2015年11月09日 13:18
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