作品情報 2014年アメリカ映画 監督:エヴァ・デュヴァネイ 出演:デヴィッド・オイェロウォ、トム・ウィルキンソン、カーメン・イジョゴ 上映時間128分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2015年劇場鑑賞89本目
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【ストーリー】
1965年、公民権運動に取り組んでいたキング牧師(デヴィッド・オイェロウォ)はノーベル賞を受賞したものの、南部を中心に根強い差別は続いていた。ジョンソン大統領(トム・ウィルキンソン)はキング牧師と連携しつつも、急激な改革には及び腰だった。
アラバマ州セルマでは、黒人の選挙人登録がほとんど認められていなかった。役所が難癖をつけたうえ、選挙人登録ができたとしても勤務先をクビになるなどの嫌がらせをうけるのだ。セルマの黒人住民の抗議を州や警察は弾圧をしていた。キング牧師もセルマに行き、州都モンゴメリーへの抗議デモを計画する。だが、黒人たちは警官隊に襲撃され、無抵抗な女性や老人までも大けがを負い、ついには死者もでる…
【感想】
アメリカ人にとっては常識かもしれませんが、セルマのことも全然知らなかったので勉強になりました。セルマの黒人たちの権利を守るためにどうするか。キング牧師は非暴力は貫きつつも、白人を挑発して、その非道さをマスコミを通じて全米に広げようと、画策をします。また、ジョンソン大統領とのやりとりも、時には相手を怒らせ、時にはなだめながらうまくもっていくための権謀は続けます。キング牧師はまだ30代半ばだというから驚きです。
一方、ウォレス州知事(ティム・ロス)をはじめとする南部の白人は、時代の変化がわからないうえ、キング牧師ら公民権運動のリーダーたちをなめていました。暴力で押さえつければすむという発想から抜けきれなかった。そこをキング牧師はうまくつきます。ただし、黒人たちも一枚岩ではなく、より、過激な運動を主張するものもいました。こうした、政治的な動きを丹念におっていたので、最初はやけに長く感じました
それが、セルマの警官隊の衝突から、一変して、緊張感あふれる場面が続きます。警官隊の容赦ない取り締まりが全米のテレビに流れ、それをみて、人種の壁を越えた支援が集まるというのは、まさに時代を感じさせました。ベトナム戦争でもメディアの力が反戦活動に与えた影響は大きかった。それを警戒して、今のアメリカをはじめとする各国政府がうまく統制をしているというのはまた別の話になります。
この警官隊の弾圧は、映画と分かっていても見るのがつらかった。まして、リアルタイムでみていた人の衝撃は相当のものだったのでしょう。多くの白人が公民権運動に協力したことは、アメリカの善良さを感じさせます。けれども、オバマ大統領がつい先日も黒人差別がなくならないことを問題視したように、今もなお解決はしていません。こうしたことを深く考えさせられました。
意外にもキング牧師のスピーチは、スピルバーグが映画化権を取得しており、本作のスピーチは、キング牧師の実際のものを参考にしながら、作られたそう。けれども、政治家が魂をこめたスピーチがいかに世の中を動かすのかというのが、よく分かります。
デヴィッド・オイェロウォも、プライベートでは気弱な顔をみせながらも、運動にあたっては信念に燃えたキング牧師の素顔をよく演じていました。また、彼を聖人化せず、運動幹部や地元のリーダー、そして、息子を失った母親(オプラ・ウィンフリー)、その対局としてウォーレス知事など多彩な人物もうまく交通整理ができています。米アカデミー賞で主題歌賞を受賞した名曲「Glory」も、素晴らしい。
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