キングスマン

　イギリスらしいスタイリッシュで格好いいけど、ブラックユーモアも交えた脳天気なスパイ映画。過去のスパイ映画へのリスペクトも踏まえており、悪趣味だけどポップなエンタメとしてはきちっとした作品です。

　作品情報　2014年イギリス映画　監督：マシュー・ヴォーン　出演：コリン・ファース、タロン・エガートン、マイケル・ケイン　上映時間129分　評価★★★★（五段階）　鑑賞場所：ＴＯＨＯシネマズ日本橋　2015年劇場鑑賞149本目



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　【ストーリー】
　幼い頃父親を亡くして、町のチンピラになっていた青年、エグジー（タロン・エガートン）は、チンピラ同士でいさかいをおこして逮捕されてしまう。幼い頃、父親に命を救われたという謎の紳士ハリー（コリン・ファース）から、絶体絶命の時には連絡してほしいと言われたエグジーがハリーを頼ると、無事釈放されてしまう。そのうえ、ハリーは自分も亡き父親も、どこの政府にも属さない独立した正義のスパイ組織「キングスマン」のメンバーであり、エグジーをスカウトしたいと申し出る。

　同じ頃、気象学の権威、アーノルド教授（マーク・ハミル）が誘拐され、救出に向かった「キングスマン」の敏腕エージェント、ランスロット（ジャック・ダヴェンポート）も殺されてしまう。そのランスロットの後任をキングスマンは探していたのだ。キングスマンのボス、アーサー（マイケル・ケイン）は、労働者階級のエグジーを嫌うが、他の候補者とともに厳しい試験を受けることになる。一方、ハリーは教授誘拐事件の裏に、世界的なＩＴ長者バレンタイン（サミュエル・Ｌ・ジャクソン）がいることをつかむのだが…

　【感想】
　「キックアス」「レイヤーケーキ」の監督だけあって、主要登場人物も脇役も片っ端から殺し合って死んでいきます。ワンカットだけで気づきにくかったけど、イギリス女王も死んでいるように思えるのですが、イギリスのスパイ映画ではこんな不敬な作品は初めてではないでしょうか。

　中盤の大乱闘シーンではアップテンポなロックとカット割りを派手にかましたしつこいほどの殺陣。クライマックスの大殺戮では、威風堂々の音楽とともに、ぼんぼん人が死んでいき、劇場からでてもしばらく「威風堂々」がエンドレスで流れてました（笑）。でも、あまりにもコミカルなので、いくら人が死んでもテレビゲームのようにしか思えないカラッとしたものになってます。

　小道具もスパイ映画らしく、現実にはありえなそうなど派手なものばかりだし、紳士の集まりであるキングスマンが、折り目正しいスーツを着て、クイーンズイングリッシュをしゃべる一方、本気で世界征服を狙うバレンタインが、自分は正しいものをしていると信じてノリノリのアメリカ的なスラング満載なセリフもいいし、その手下で、美人の殺人マシーンガゼル（ソフィア・ブテラ）など悪役も魅力的。ハリーがエグジーに「プリティウーマン」を知らないと言われて、若者と話が通じないのかとがっくりしたあとに「マイフェアレディ」ネタで盛り上がったり、ギムレットの特別な注文方法とか小ネタも満載です。

　エグジーの成長ストーリーとしてもよくできていて、最初はチンピラのボスにもぶるっていたのが、スパイの特訓を受けるとともに、服装も師匠のハリーに似てきて、余裕綽々で敵をやっつけているというのもいい。まあ、救出した北欧の王女さまと、派手な××プレイをするのは、007のパロディかもしれませんが、苦笑しましたけど。

　それでいて労働者階級をバカにする支配者階級に鉄槌を下したり、ＩＴ技術が進歩しすぎる脅威をしめしたり、極東の庶民としては内容にも十分溜飲がさがりました。まあ、あまりにも大勢の人が死ぬし、どうみても巻き添えだろうという人も多いので、良識派は眉をひそめるかもしれませんが、本家007より、こっちのほうが僕はよほど好きですねえ。