作品情報 2014年ドイツ映画 監督:ジュリオ・リッチャレッリ 出演:アレクサンダー・フェーリング、アンドレ・シマンスキ、フリーデリーケ・ベヒト 上映時間107分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:角川シネマ有楽町 2015年劇場鑑賞152本目
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【ストーリー】
戦後10年以上たった1958年、ナチスのユダヤ人虐殺の記憶は封印され、若い世代は何もしらないまま育っていた。フランクフルト地検の若手検事ラドマン(アレクサンダー・フェーリング)は、ユダヤ人のシモン(ヨハネス・クリシュ)と地元紙の記者グルニカ(アンドレ・シマンスキ)が、庁舎で騒いでいるのを目にする。シモンによると、アウシュビッツの看守だった男が学校の教師をしているというのだ。
検事正のウォルター(ロベルト・フンガー=ビューラー)から無視するようにいわれるが、ラドマンはユダヤ人虐殺のことを何もしらないことをグルニカに非難され、捜査をはじめだす。そして、アウシュビッツの看守らナチスの武装親衛隊(SS)が戦後、何食わぬ顔してドイツ社会に溶け込んでいることに気づくが、警察も検察も動こうとしない。シモンですら、政府幹部に元ナチスがいるため、捜査など無理だというのだが…
【感想】
重苦しいテーマを扱っていますが、ラドマンの真っすぐな正義感と、恋人のマレーネ(フリーデリーケ・ベヒト)とロマンスを挟むことで、テンポよくみられることができます。ナチスの残虐行為を聞いて、同僚の検事や事務官の女性が次第に本気になっているところなどは、みているこちらも戦犯をなんとしても捕まえなければと思わせます。
ただ、単純なサクセスストーリーでなく、イスラエルにアイヒマンをさらわれたり、あるいは、意外な人物がナチス関係者だったり、ほろ苦い現実をいれるのは、いかにもドイツ映画らしいところ。
グルニカや捜査の決断をするバウアー検事総長(ゲアト・フォス)は、映画のラストに献辞がでてくることから実在の人物みたいですが、ラドマンは架空の人物みたいですね。ただ、彼のような正義感あふれる人間を作ることが物語りを動きやすくさせたのでしょう。
若い世代が親の世代を裁くのはおかしいとか、戦争中は命令だから仕方がないという論調で、裁判への批判は相当あったそうです。正義とはなにかラドマンが苦悩するシーンもあります。そもそも、戦犯で社会的成功者は一握りであり、町のパン屋とかきこりとか、そういう人も多かった。それだけに、普通の人が戦争の狂気にまきこまれるとどうなるのか、ということは実感しました。
しかし、ナチスのユダヤ人虐殺は常軌を逸する行為であり、しかも、命令でなく、個人の楽しみで殺人行為を行った例も多々あったようですから、やはり裁かれるべきだったのでしょう。
ドイツは戦後謝罪して、日本はしていないからダメだという論調があります。日本の場合、民族絶滅のようなことはしていないから、同列に扱うのはどうかとの思いもありますが、せめて、戦犯を自国の手で裁いていたらここまで、戦後問題がこじれることがなかったのかもしれません。戦後70年にふさわしい作品の一つといえましょう。
【2015年に見た映画の最新記事】
おっしゃる通り、「普通の人が戦争の狂気に巻き込まれるとどうなるのか」ということは、ドイツや日本に限らず、現在進行形のシリアやイラクなどの現状を見ても、人類共通の課題として常に考え続ける必要があることだと思います。
子や孫のためにも「戦後」と呼ばれる時間が、これからも長く続くよう、祈らざるを得ませんね。
戦後70年でいろんな作品が上映されていますが、
戦後処理にスポットをあてたのはほかになく
それだけに今の日本にも通じる、貴重な作品だと
思いました。多くの人がみて、考えてくれればと思いました。