作品情報 2015年日本映画(アニメ) 監督:長井龍雪 声の出演:水瀬いのり、内山昂輝、雨宮天 上映時間119分 評価★★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズ日本橋 2015年劇場鑑賞152本目
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【ストーリー】
幼い頃に自分のおしゃべりのせいで、家族がばらばらになった成瀬順(水瀬いのり)は、目の前に現れた玉子の妖精(内山昂輝)に、しゃべるとおなかが痛くなる呪いを掛けられる。それ以来、彼女はしゃべることがなくなった。
高校2年生のとき、担任の城嶋(藤原啓治)から、地域交流祭の実行委員に任命される。他の実行委員は心を閉ざして何事も無気力な拓実(内山昂輝)、チアリーダー部の優等生だが、中学時代のある行為を悔いている菜月(雨宮天)、野球部のエースだったがけがで野球ができなくなった大樹(細谷佳正)だった。それぞれ心の傷を負っている4人の気持ちはバラバラだったが、城嶋が出し物としてミュージカルを提案。さらに、クラスの前で「しゃべれない」と罵倒された順が歌いだしたことで、事態は動き出す。
【感想】
序盤、順がしゃべれなくシーンは見ている心が痛んだけど、親目線になってしまいました。自分が子供と同じ目線に立つというのは聞こえがいいけれど、両親とも自分の責任を子供におしつけている。その結果、未熟な子供は心に闇を抱えて成長してしまう。
その彼女を救い出したというのが、高校のクラスメイトだというのは青春映画らしく心地よい。しかも、それぞれが心の傷をもっています。おそらく多くの人にとって高校時代というのは傷つきやすく、かつ、純粋でいられる最後の年代なのでしょう。4人も傷つけあうことがありますが、陰惨ないじめにはならず、率直に謝罪し、やがて、他人を思いやる心を思い出していきます。
順に呪いをかける玉子と、そこから救い出す拓実が同じ声優で演じられているというのも興味深い。どんな意味があるのかいろいろ深読みできそうですが、やはり順にとって拓実の存在が大きかったということなのでは。また、4人の友情、恋愛といったものも、彼らの心のひだが表情を含めてうまく描けており、納得できるものになっています。
終盤の山場は端から見ればわがままなのかも知れませんが、やはり未熟な高校生なんてそんなものでしょう。僕は彼ら彼女らの気持ちが痛いほど伝わってきました。人間は失敗を繰り返しながら生きていくというのがよく分かります。エピローグ的な話も心に響きます。やはり相手に心を伝えることがいかに重要なのか、人を好きになる気持ちがいかに大切なのか。中年になった僕はとても切なくなりました。
ミュージカルシーンはベートーベンの「悲愴」やオズの魔法使いの「オーバー・ザ・レインボー」など既存の名曲を使っているだけあり、迫力があるものでした。入場者プレゼントで歌詞が配られたので、読みながら思い返すこともできます。クライマックスの曲は、歌詞が聴き取れなかったので非常に助かりました。アニメも写実的な背景(秩父が舞台だそうですが)もきれいですし、音響の整った劇場でみたほうが良い作品です。
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