2015年12月17日

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲

 人間に虐げられた犬たちが復讐するという話ですが、主人公の少女の行動がいらつかせるのと、暴れるなら暴れればいいのだけど、襲う相手が違うと思うし、妙に良い話にしようとしているところもあり、個人的には今イチでした。

作品情報 2015年ハンガリー・ドイツ・スウェーデン映画 監督:コルネル・ムンドルッツォ 出演:ジョーフィア・プソッタ、シャンドール・ジョーテール、ラースロー・ガールフィ 上映時間:119分 評価★★★(五段階) 鑑賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2015年劇場鑑賞188本目



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【ストーリー】
 両親が離婚して母と暮らす13歳の少女リリ(ジョーフィア・プソッタ)は、愛犬のハーゲンだけが心の支えだった。だが、母が旅行に行くため、父のダニエル(シャンドール・ジョーテール)のところに預けられる。しかし、雑種犬は高い税金を払わなければならず、近隣から苦情もあり、ダニエルはハーゲンに渋い顔。

 さらに、リリが音楽学校にハーゲンを連れて行き、教師(ラースロー・ガールフィ)に激怒されたことから、ダニエルはハーゲンを捨ててしまう。やがて、ハーゲンは野良犬として人間達に酷い目にあった上、収容施設に入れられてしまう。追い詰められたハーゲンは仲間の野良犬たちと、ついに人間に牙をむく。

【感想】
 犬が人間を襲うパニックホラーと思いましたが、監督は犬を不寛容な権力者に虐げられたものの怒りの象徴としており、タイトルのホワイトゴッドも、最初はハーゲンは茶色なのにどうしてと思いきや、公式サイトの監督インタビューをみると、犬にとっての神は人間であり、しかも、白人なのかという問いがあるそうです。だからエンタメか、社会派かどうか宙ぶらりんに。まあ、カンヌで表彰されたのは、そうした視点があったからでしょうけど。

 僕が残念だったのは、野良犬たちは収容施設で反乱を起こすのだけど、収容施設の職員が単なる悪玉にしか描かれていない。本当は一番悪いのは、犬をむやみに捨てるリリとダニエル親子のような飼い主でしょう。しかし、これでは物語が矮小化されてしまいます。

 ハーゲンは自分をいじめた人間に復讐を次々にしていきます。でも、ペット禁止のマンションで犬がうるさく鳴いたら、そりゃクレームもつけるわな。リリが何もしないで、近所に迷惑をかけているだけで、その迷惑を受けた人たちが悪役になっているというのも、嫌な感じ。この少女は正義という設定が、観客にこびているようでダメでした。むしろ、大人だろうが子供だろうが、人間をだれかれ構わず襲うほうが、テーマ的にもあっていたのでは。

 無人のブダペストの中心部を250匹の犬が暴れ回るシーンなど、映像的には見所もたくさんあります。それだけにストーリーがもうちょっとこなれていればねえ。ラストもいかにもとってつけたようだし。ペットに対する人間の身勝手さを考えるのだったら、もっと、飼い主を罰するような内容を見たかったかも。これがペットでなく、虐げられている人を象徴する作品としても、リリのような存在は、むしろ、事態を悪化させているわけですから、いくら美少女でも、だから正しいというのは納得いかない。あと、クラブのダンスシーンは、目がチカチカして気分がちょっと悪くなりました。
posted by 映画好きパパ at 07:05 | Comment(0) | TrackBack(2) | 2015年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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