2015年12月22日

さようなら

 大阪大学の石黒研究室が開発したアンドロイドが重要な役割を占める、人間とアンドロイドの共演という、時代を感じさせる作品。作風は非常に静かなので、好き嫌いは分かれそう。ただ、2015年という時代を象徴する作品であることは間違いないでしょう。

作品情報 2015年日本映画 監督:深田晃司 出演:ブライアリー・ロング、新井浩文、ジェミノイドF(アンドロイド) 上映時間:112分 評価星★★★★(五段階) 鑑賞場所:新宿武蔵野館 2015年劇場鑑賞189本目



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村


【ストーリー】
 近未来の日本、原発事故で汚染され、全国民は死の恐怖に怯えながら、国外脱出の順番を待っていた。高原の人里離れた家に住むターニャ(ブライアリー・ロング)は、子供のころから一緒だったアンドロイドのレオナ(ジェミノイドF)と静かに暮らしていた。

 友人の佐野(村田牧子)や恋人の敏志(新井浩文)が気遣ってたまに訪れてくれるが、避難がすすむなか、ターニャはある事情から取り残されていく。そんな彼女の心を、レオナは数々の詩を読むことでなぐさめるのだった。

【感想】
 フランス語でランボーを口ずさむアンドロイド。非常にシュールな光景です。石黒教授のインタビューによると、もっと人間に似た形状もできたそうですが、あえて、アンドロイドとわかるようにしたそう。それでも、ターニャが片言の日本語ということもあり、遠目でみると、人間とアンドロイドが一瞬分からないようなシーンがありました。
 
 パンフレットに一部あるだけですが、アンドロイドは人間の女優が吹き替えるとともに、動作も事前にプログラミングしたところと、その場で動かすこととそれぞれあったそうです。パンフではもうちょっとこのあたりを詳しく知りたかったかも。

 最近、AIやロボットに人間の職業が奪われるという懸念が広がっていますが、クリエイティブな職業は大丈夫という話でした。しかし、この作品をみると、俳優のようなクリエイティブな職業もロボットが入っていく可能性は十分あると思いました。ただし、現段階ではあくまで、ロボットなりアンドロイドの役でしょうが。それでも、大道具としてではなく、俳優としてアンドロイドが出演するというのは画期的なものです。

 作品自体は非常に意欲的で、長野の高原の美しい風景のなか、放射能に侵されて徐々に弱っていくターニャや、それぞれ心の弱さをみせる、佐野、敏志といった人間と、体も心も変わらないアンドロイドの対比がよく分かります。心とはなにか、死とはなにか、非常に哲学的な思考に入れるとともに、自然の悠久の流れに対応できるのは寿命の短い人間でなく、アンドロイドなのかな、と思いました。そういえばスピルバーグの「AI」なんて作品もありましたね。

 ただ、監督のそうしたこだわりが観念的になっている部分もあり、一般受けするかどうかは微妙。個人的には終盤、ターニャがどうして裸になる必要があるのか、気になりました。監督自身がインタビューで、見る人の受け止めに任せたいのような話しているので、そういう作品が苦手な人にはあわないでしょうね。僕なんかは、幻想的な世界にひたるだけでも、生と死を感じられると思いながらみていました。
posted by 映画好きパパ at 06:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 2015年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック