2016年01月17日

フランス組曲

 アウシュビッツで死亡したフランスの女流作家、イレーヌ・ネミロフスキーが収容所で書いた遺作を映画化。占領下のフランスでドイツ軍将校との禁じられた愛を描いた作品で、ありがちなプロットとは言え、ネミロフスキーが収容所でどんな思いで書いたかを考えると、非常に重たく感じます。

 作品情報 2014年イギリス、フランス、ベルギー映画 監督:ソウル・ディブ 出演:ミシェル・ウィリアムズ、クリスティン・スコット・トーマス、マティアス・スーナールツ 上映時間:107分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2016年劇場鑑賞9本目



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 【ストーリー】
 1940年、フランスの田舎町。出征した夫の帰りを、義母のアンジェリエ(クリスティン・スコット・トーマス)とともに待つリュシル(ミシェル・ウィリアムズ)は、戦時中にもかかわらず、町の名士として戦前と変わらない生活を送っていた。

 だが、フランスがドイツに降伏。ドイツ軍が町に進駐してくる。リュシルたちも、屋敷の一部をドイツ軍のブルーノ中尉(マティアス・スーナールツ)の宿舎として明け渡すことになった。憎むべき敵のドイツ軍だが、戦前は作曲家だったというブルーノのピアノの音色に、リュシルは心が落ち着くのを感じる。さらに、夫と義母の裏切りをしり、彼女の心はブルーノにいつしか惹かれていくのだが…

 【感想】
 ドイツ軍はドイツ語ですが、フランス人はなぜか英語でしゃべります。スポンサーの問題なんだけど、美しいフランスの田舎の風景(でもロケはベルギー)にはそぐわず、ちょっともったいなかった。ネミロフスキーは収容所で亡くなったため、ラストは後世に付け加えられたそうですが、ちょっと取って付けたような気がします。

 さて、町を占領したドイツ軍の多くは野獣のようで、町の女性達ともトラブルを起こします。しかし、ブルーノだけは繊細で理知的でした。小金持ちで、戦時中でも自分の利益しか考えていない義母の姿に幻滅するにつれ、敵でありながらも紳士的なブルーノの振る舞いは、いつしかリシュルの心に入っていきます。

 しかし、あくまでドイツ軍は敵でしかありません。理不尽なことを押しつけられて不満が高まる住民達。リュシルもブルーノもそれぞれの国が敵対しているという立場から逃れられません。もし、戦争など関係なく出会えたら、どれほど良かったか。若い女性を襲ったドイツ軍将校が殺害されたことから、物語は単なる悲恋物語からサスペンスの度合いも高めていきます。

 リシェルの心が動いているのではと疑う、アンジェリエの表情はみもの。クリスティン・スコット・トーマスの威厳と迫力ある演技が見応えあります。また、マティアス・スーナールツは、オフの表情と、冷厳な将校の表情の二面性が良く出ています。一方、リュシルの演技は役柄もあるけど、悪者にできないだけあって、ちょっと単調かも。それでも、揺れる女心というのを控えめな演技でみせるところは、さすがだと思いました。
posted by 映画好きパパ at 07:38 | Comment(2) | TrackBack(5) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブログ拝読いたしました。
作品への高い評価など私の感想と近く、うれしく思いました。即物的ですが、私はリュシルの美しさと可憐な演技に心を魅かれました。アンジェリエ夫人を演じたクリスティン・S・トーマスの年季の入った演技力も一級品ですね。
ラストは、おっしゃる通りやや唐突な感じがしないでもありませんが、原作者が亡くなっていることや、本作が未完の大作であった点などを踏まえれば、映画化するにはこうした“オチ”を付ける必要があったのだと思います。ただ願わくば、原作者の大きな構想力がどのような結末に導こうとしていたのか、知りたいところですね。
拙ブログにトラックバックをお寄せいただき、ありがとうございました。
Posted by オジロワシ at 2016年03月16日 09:40
コメントありがとうございます。
原作者がもし収容所で亡くならなかったらと、どんな結末がでてきたのでしょうか。つくづく戦争は大切なものを失わせると思わせます。

俳優陣の演技は男女とも優雅かつ、戦争にむしばまれていく様子をきちんと体現していて、美しい絵画のような作品との印象も残っています。ヨーロッパ映画だけど、フランス映画よりイギリス映画っぽい部分もあり、そこも面白かったです。
Posted by 映画好きパパ at 2016年03月16日 15:13
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