作品情報 2014年アメリカ映画 監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル 出演:マイカ・モンロー、キーア・ギルクリスト、ダニエル・ゾヴァット 上映時間:100分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:TOHOシネマズ川崎 2016年劇場鑑賞14本目
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【ストーリー】
静かな住宅街で、少女(ベイリー・スプライ)が家族の制止を振りきって何かに怯えるように逃げ出す。翌朝、少女は体中がねじ曲がった惨殺体で発見された。
女子大生のジェイ(マイカ・モンロー)は、新しい彼氏のヒュー(ジェイク・ウィアリー)とのデートでウキウキしていた。映画をみて、食事をして、車の中での体験。行為が終わり、満足げに自分の夢を語るジェイにいきなりヒューが襲いかかり、車いすに縛り付けてしまう。そして、いきなり奇妙なことをいって謝り出す。「これで君は感染した。誰かに移さない限り、それがやってきて君を殺す」と。
【感想】
わかりにくいタイトルと思ったら、そのまんま。感染した人の前にそれが現れ、追いつくまでついてくるのです。しかも感染するのは性行為を通じてのみ。だれかとやらなければ、自分が殺されるてしまうという中学生が考え出しそうなアイデアです。
ところが、それが本当に怖い。それは人間に化けることができ、老婆に化けたり、子供にばけたり、ひどい場合は自分の母親に化けたり。ただ、無言でまっすぐ歩くだけなのです。歩くだけだから車で逃げればいったんは振り切れるけど、何時間かすれば再び現れます。しかも、自分しか見えないので、周りに警官がいようと教師がいようと、親がいようとまったく役立たないというのが恐ろしい。
それだけならただのホラー映画なのですが、ジェイは幼なじみの草食系男子ポール(キーア・ギルクリスト)、妹のケリー(リリー・セーペ)、親友のヤラ(オリヴィア・ルッカルディ)、向かいの家に住む青年グレッグ(ダニエル・ゾヴァット)とヒューを捕まえて解決策を見つけようとしますが、最終的にはポールかグレッグに感染させるしかない。自分が助かるために幼なじみや友人を見殺しにしていいのかという究極な選択を迫られます。
ジェイたちの関係は、ポールとは初めてのキスをしたけれどそれっきり、でもポールはジェイに好意をもっているとか、グレッグはやさしいだれからももてる好青年、ヤラは文学少女、ケリーは姉思いだけどポールにも好意を寄せているなど、青春ドラマにもでてきそうな話。というか、監督の前作は青春映画なので、このメンバーでホラー要素をなくした青春映画を作っても普通に面白いのにと思わせました。
80年代ホラーみたいなテイストやBGMだし、エラがタブレットを持っているほかは、ジェイたちは携帯電話を使っておらず、意図的に時代をわかりにくくしています。単純にみると80年代に社会問題となったエイズのことかなと思うのですが、エラがドストエフスキーの「白痴」を朗読する場面もあり、より根源的な生と死について取り上げたかったのかも知れません。アメリカではミッチェル監督とタランティーノがツイッターで映画の意図を巡って論戦をしたそうです。
また、個人的に思ったのは、例えばゾンビ映画にゾンビに感染すると人間としての尊厳もなく、ひたすらやられ役になるじゃないですか。本作は感染した人間の恐怖と必死で生きようとする様子を描いていて、それも新鮮に感じました。
といって、小難しい話ではなく、ひたすら歩いて追っかけてくる「それ」にどう対応するかというだけの物語。しかし、ロケ地のデトロイトの廃墟だらけの町並みや、監督のぐるりとパンした後、遠くから現れる「それ」にフォーカスをあててずんずん近づいてくる様子を見せる撮影手法。さらに、いつ出てくるか驚かせるおどろおどろしいBGMもあいまって、「志村、うしろ」的な場面も含めて、ホラー映画を久々に堪能できました。
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