作品情報 2015年ハンガリー映画 監督:ネメシュ・ラースロー 出演:ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン 上映時間:107分 評価★★★★★(五段階) 鑑賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2016年劇場鑑賞28本目
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【ストーリー】
1944年、ポーランドのアウシュヴィッツ収容所。ユダヤ人収容者のうち、体力のある一部の男は、移送されてきた収容者をガス室に入れたり、焼却した遺体を処分するなどの作業をやらされる「ゾンダーコマンド」になっていた。しかし、数カ月もすれば、彼らも処刑されてしまう。
ハンガリー系ユダヤ人のサウル(ルーリグ・ゲーザ)は、ガス室のなかでわずかに息をしていた少年(ゲルゲイ・ファーカス)を見つけて驚く。彼の息子だったのだ。少年はすぐに処刑されたが、サウルは何とかしてユダヤ教のやりかたにのっとって埋葬しようと決意する。
【感想】
ユダヤ教では火葬では死後の復活ができないため土葬にします。そのため、サウルは、自分が死んでも息子だけは死後に復活させたいと思い込み、やがて狂気に満ちた行動をとるようになります。もっとも、ここでは狂気が当たり前なので、むしろ正気だったといえるかもしれません。
この映画の残酷なのは、少年の遺体が本当に息子なのかが分からないこと。もし赤の他人だとすれば、なにが、そこまでサウルを駆り立てたのか。それまで自分のやっていた行動の贖罪なのか。あるいは、たった一人でも子供の魂を救いたいという思いなのか、受け手に解釈は任されます。
ラスト、それまで無表情だったサウルが、笑顔を見せます。これも、見る人によって解釈が分かれますが、希望なのか、狂気なのか。せめて希望であってほしいのだけど…。
その一方で、収容者の遺体が部品扱いされているように、列車で着いてすぐにガス室に入れられ、荷物のなかの貴重品をチェックされ、遺体は焼却炉に運ばれ、灰は川に流される。一連の作業が工場のように流れていくのは、何ともおぞましく、同時に、人間というのは最初は怖がっても、こういうのに慣れてしまうという恐ろしさも感じました。
観客の僕からしても、あまりにも遺体がごろごろしているし、サウルにピンを合わせた被写界深度が浅い撮影方法もあり、だんだん、部品が転がっているようにしか見えなくなります。それぞれ家族がいて、人生があった人間なのに。とにかく考えさせられる作品です。
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