2016年02月27日

キャロル

 1950年代のアメリカを舞台に、当時は市民権を得られていなかった女性の同性愛を描いた作品。美術、ファッション、撮影などは満点に近く、主演の2人も本当に美しかったのだけど、これ、男女の話だったら、普通のメロドラマだよな、と見ていて醒めた部分もありました。

 作品情報 2015年アメリカ映画 監督:トッド・ヘインズ 出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、カイル・チャンドラー 上映時間:118分 評価★★★★(五段階) 鑑賞場所:渋谷シネパレス 2016年劇場鑑賞36本目 



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 【ストーリー】
 1952年、ニューヨークのデパートの売り子だったテレーズ(ルーニー・マーラ)は、仕事も、恋人のリチャード(ジェイク・レイシー)との関係も、ただ相手のいうままに押し流されるだけだった。

 クリスマス直前、幼い娘へのプレゼントを買いに来た金持ちの夫人キャロル(ケイト・ブランシェット)が売り場に現れる。彼女のゴージャスな美しさに心を奪われたテレーズは、キャロルの忘れ物を届けたことから親しくなる。キャロルも夫のハージ(カイル・チャンドラー)との愛のない夫婦関係が破綻しかけていた。テレーズとキャロルはすぐに惹かれあい、それは当時は禁断の関係へとつながっていく。

 【感想】
 冒頭、クリスマスシーズンのニューヨークの町並みを忙しげに歩く人々を、地下鉄の送風口の格子からパンして映し出し、やがて、デパートのなかへと案内する演出は、黄金時代のハリウッドの名作といわれても納得できるオープニング。その後、ちょっと時系列が混乱しましたが、これはあとでの伏線になっており、クラシックな演出とゴージャスな舞台回しは、今でも十分楽しめることを教えてくれます。

 テレーズがキャロルに恋に落ちる瞬間は、予告編でいうほど衝撃的ではありませんでしたが、キャロルの手練手管のうまさに、こりゃ、だれでも落ちちゃうなとしみじみと納得しました。そして、ふたりの関係が徐々に深まっていく描写を丹念に描いており、中盤まではスローテンポですが、これが後半のサスペンフルな雰囲気のいいスパイスになっています。

 また、キャロルがテレーズの前では恋をリードするお姉様、幼い娘の前では、何もかもなげだしそうなお母様の両面を持っているというのも、物語に魅力を与えます。反面、テレーズをもっとじっくり描いてもよかった気がしますが(原作者のパトリシア・ハイスミスはテレーズに自分を投射しています)、まあ、彼女のぬぎっぷりをみられるだけでも満足だったかな。

 男の僕からすると、ハージもリチャードも、悪いやつじゃないんだけど、洞察力が深くなく、女性陣の手のひらに転がされるのがはがゆい。当時の時代背景を考えれば、キャロルとテレーズのような女性の自立というのは、いかに衝撃的かということも納得できました。キャロルの親友で元恋人のアビー(サラ・ポールソン)の存在も良かった。予告編で流れている「No Other Love」をはじめ、BGMも実におしゃれ。

 ただ、恋愛ドラマなので、キャロルがイケメンのおじさまだったら、同じストーリーでも全然違ったよなとも思えました。同性愛の問題を除いても、女性の自立が描き切れていれば、それでも通用する話ですしね。
posted by 映画好きパパ at 21:23 | Comment(0) | TrackBack(15) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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