作品情報 2014年スペイン映画 監督:カルロス・ベルムト 出演:ルイス・ベルメホ、バルバラ・レニー、ルシア・ポリャン 上映時間:127分 評価★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2016年劇場鑑賞55本目
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【ストーリー】
白血病で余命わずかな12歳の少女、アリシア(ルシア・ポリャン)の願いは、大好きな日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の世界で1点しかない特別な衣装を着て踊ること。それを知った失業中の父ルイス(ルイス・ベルメホ)は衣装を手に入れようとするが、7000ユーロもするため高すぎて手に入らない。
意を決して、夜中に宝石店に忍び込もうとしたルイスだが、謎めいた人妻バルバラ(バルバラ・レニー)と、ひょんななりゆきから一夜を過ごすことに。そして、バルバラが金持ちの夫人と知ったルイスは、彼女を脅して7000ユーロを得ようとする。それが悲劇の始まりだった。
【感想】
「魔法少女まどかマギカ」や三島由紀夫などに影響を受けたということですが、魔法少女の話は冒頭と終盤にでるだけで、物語を転がすアイテムにしかすぎません。魔法少女ユキコのテーマ曲は長山洋子の30年前の曲「春はSA-RA SA-RA」で、スペインの風土とあわせると非常にエキゾチックな効果はありましたが。
物語には2組の歪んだ愛情がでてきます。一つはアリシアとルイスの親子愛。確かに幼い娘が余命いくばくもないということで、彼女の願いは何でもかなえたいという気持ちも分かりますが、実はルイスの愛情の押しつけに過ぎない友言えます。途中、アリシアが一見なんと言うこともなく、でも、実は非常に重要で、カネやモノなんか関係ない願いに気づかないところからもうかがえます。父親思いのアリシアと気持ちがすれちがうというのは、娘を持つ僕からしても、何ともいえない哀しさがあります。
もう一つはバルバラと、彼女と因縁のある男性ダミアン(ホセ・サクリスタン)。ダミアンはバルバラの教師ですが、劇中で語られないできごとで服役していました。その事実だけで、ダミアンが彼女に特別な思い入れを持っていることがわかります。でも、それは完全に歪んだ愛情であり、しかも、それを利用とするバルバラのしたたかさも完全にいっちゃってます。途中、バルバラがサイコパスっぽいところをみせる場面もあり、歪んだもの通し、マイナスとマイナスでものすごい負のエネルギーが出てしまうということでしょうか。
終盤までは淡々と進む上、必要最低限のことしかみせず、ダミアンの服役の理由はとか、バルバラの金策が具体的にどのようなモノだったのかとか、観客の想像にまかせます。それが終盤、一気に加速度がついて、物語は転がっていきます。ラストのダミアンとバルバラの会話も正直受け手によっていろんなことを想像するでしょうから、解釈は観客に任せますといったところでしょうか。
大人たちはみんなどうしようもなく歪んでいる中、守護天使ともいうべきアリシアちゃんは、ぶさかわいいところも含めて、観客の母性本能をくすぐるでしょう。そんな彼女の願いがかなったのかというのも、見終わった後に振り返ると、なかなかダークだなと思いました。ただ、もう少しバルバラの狂気の理由とか書き込んでほしかった気もします。
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