2016年04月04日

ヤクザと憲法

 今年最大の問題作。東海テレビが暴力団事務所に100日にわたって密着取材して、ヤクザの日常を追ったドキュメンタリーです。見終わった後、正義とは何か、自分の根底を揺さぶられました。DVDにはならないそうなので、映画館で見ることを強くお勧めします。

 作品情報 2015年日本映画(ドキュメンタリー) 監督:土方宏史 上映時間:96分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:キネカ大森 2016年劇場鑑賞65本目 



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 【ストーリー】
 大阪の指定暴力団、二代目東組二代目清勇会事務所に東海テレビのディレクターとカメラマンが入り、100日以上にわたって密着取材をする。暴力団員の日常から警察の家宅捜索、シノギの現場など、衝撃的な映像が続く。けれども、一番衝撃的なのは…

 【感想】
 東海テレビは取材にあたって@謝礼は払わないA放映前に収録テープを魅せないBモザイクは原則かけないという条件を掲げ、清勇会の川口和秀会長はその条件をのみました。もちろん、犯罪行為そのものはカメラの前でやるほど愚かではないけど、もしかしたら違法薬物売買とか野球とばくの集金をやっているような場面は堂々とモザイクなしで写っています。

 また、一番驚いたのが、警察の家宅捜索を内部から堂々と映し出していること。警察もテレビ局関係者と思わなかったのか、どちらがヤクザかわからないような柄の悪さで、捜査員のそんな態度もモザイクなしで映し出している。関西のテレビ局なら警察取材がやりにくくなるだろうから自粛するだろうけど、東海テレビだからできたのか。

 また、川口会長が60歳とも思えない、映画スターのような渋いイケメン。地元の小さなお好み焼き屋のおばちゃんなんかも、「警察は怖いけど、親分なら怖くない」と、きさくに話しかけたりしています。そんな川口会長があえて取材を受け入れたのは、暴力団対策法によって、人権侵害といっていい状況が起きていることを知ってもらいたいこと。暴力団員自身は自業自得ですが、子供が幼稚園や保育園から拒否されたり、給食費を払いたくても銀行口座が開けなくていじめの対象になったりなど、家族が大変な思いをしています。

 さらに、暴力団員といってもヤクザ映画に出てくるような強面は一握り。というか、高齢化に驚いたのですが、30人ほどの組員30人のなかで一番下っ端の若手組員は、いじめられて引きこもりになり、それが嫌になって暴力団に入りたいといってきた青年で、ミスターおくれのような容貌のひょろっとしたメガネで、これはいじめられっ子としか思えないようなひ弱な青年。

 また、中年のヤクザはもともとペンキ屋で家族もいたのに、不況で店は倒産。家族はばらばらに。誰も助けてくれない中、唯一、川口会長だけが救いの手を伸ばしてくれました。幸せだった頃の家族写真をアパートで一人になったときに見る彼にどんな救いがあるのでしょうか。こういう社会から取り残された人が行き場がなくて暴力団員になっている。暴力団だから悪人として排斥すれば、彼らはどうすればいいのかという問題が現実としてあることを川口会長は訴えています。結局、暴力団員といっても、一人一人は人間であるわけで、アクション映画のようなゲームのコマでないことを思い知らせます。

 もう一人の主人公といっていいのが、山口組の元顧問弁護士として有名だった、山之内幸夫元弁護士。ヤクザの顧問弁護士だからさぞもうけているのだろうと思いきや、事務所も小さく、給料が払えず事務員は次々と辞めていくさま。しかも、山之内元弁護士自身も、警察につかまり、これは不当捜査だと、大弁護団が組織され、裁判で無罪になりました。(最近の別件で有罪になり、弁護士資格ははく奪されている)。作り手の意図とは別に、これだけ見ていると、暴力団側に同情すらしたくなる部分もあります。

 けれども、現実をみると暴力団の存在が社会の害悪になっています。山口組の分裂騒動も、いつ市民が巻き添えになるか分かりません。川口会長自身も、配下の組員が抗争で一般人を巻き添えで殺害した責任で有罪となり、20年以上も刑務所に入っていました。暴力団は絶対なくさなければならない。

 では一般の組員をどうすればいいのか。排斥だけしていれば、過激にならないのか。本人は責任があっても、家族はどうなのか。考えれば考えるほど答えが出てきません。憲法で保証されている平等とはどうなっているのか。

 といって重たい作品でもありません。土方監督は天然なのか、分からないことはどんどん聞きます。事務所の陰に置かれた荷物をみて「これはマシンガンですか?」と聞いて、ヤクザのほうが「それは日本では法律違反です」とあきれられるほど。こうした意図しないユーモアの場面もあり、非常に良くできた作品なので、多くの人に見てもらいたいですね
posted by 映画好きパパ at 07:16 | Comment(0) | TrackBack(1) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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