2016年04月07日

リリーのすべて

 今から90年前、世界で初めて性同一性障害で性転換手術を受けた男性の物語。際物かなという懸念もあったのですが、「英国王のスピーチ」のトム・フーパー監督だけあって格調高かった。夫婦の愛の深さと孤独が痛切に感じられる傑作でした。

 作品情報 2015年イギリス、ドイツ、アメリカ映画 監督:トム・フーパー 出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィカンダー、ベン・ウィショー 上映時間:120分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2016年劇場鑑賞68本目 



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 【ストーリー】
 1926年のデンマーク。新進気鋭の風景画家アイナー(エディ・レッドメイン)は、妻で画家のゲルダ(アリシア・ヴィカンダー)から、女性のモデルが約束の時間に来なかったため、女装してモデルになってほしいと頼まれる。それがきっかけで自分の内面は、本当は女性であることに気づく。

 最初は女装をおもしろがっていたゲルダだが、アイナーが本気で女性の「リリー」になりたがっていることを知り動揺する。ゲルダは愛するアイナーの願いをかなえたい。でも、アイナーがリリーになることは、ゲルダの愛する夫がいなくなってしまうのだから…

 【感想】
 アイナーが主人公ですが、ゲルダ視点でものごとが進むため、どちらの気持ちも痛いほど分かってつらくなります。アイナーは自分が女性であることに気づいてしまった以上、男性の恰好でいるのは自分自身を否定するわけです。しかし、当時は性同一性障害は精神病と見なされ、強制入院させられる時代。また、ゲルダを悲しませないためにも無理に男の恰好をして、どんどんやつれていきます。

 時代的にもノーマルかアブノーマルか問われるわけですが、世間の多数派に属さないリリーが、いかに孤独を感じているのか痛切にわかります。同時に、愛するゲルダを傷つけてしまっていることも。でも、自分にウソは付けない。リリーでいるときのレッドメインの表情が、歓喜に満ちあふれており、自分のアイデンティティーというものが人間にとっていかに大切かということがよく伝わるし、街を歩いているリリーが気持ち悪いとチンピラにぼろくそにされる場面は、胸が痛くなります。

 そんな彼を見ていられないゲルダですが、アイナーとリリーは両立できない。アイナーを助けるためにリリーを認めると、アイナーは死んでしまうというややこしい関係にあります。時にはリリーを認め、時にはアイナーに戻って欲しいと哀願する。揺れ動く気持ちと置き去りにされた孤独もよく分かる。リリーもゲルダも、どうしようもないぐらい孤独で、でも、それってだれにでも解決できる問題ではありません。

 そこへ、コペンハーゲンのゲイ、ヘンリク(ベン・ウィショー)、アイナーの幼なじみのハンス(マティアス・スーナールツ)といった理解ある人物が支えてくれます。リリーとゲルダが画家という自由な職業であり、なおかつ周囲に恵まれたというのは、救いでした。

 俳優陣はレッドメインのなりきりぶりがすごい。オスカーを受賞した「博士と彼女のセオリー」よりも上の演技だと思います。喜び、不安、そして、やつれていく表情。リリーがパリののぞきの風俗店で女性の仕草を真似するシーンはぞっとするほど美しい。一方、アリシア・ヴィカンダーは初見の女優ですが、こちらの献身的なゲルダと、本来の勝ち気なところとさまざまな使い分けがお見事で、オスカー受賞(助演女優賞)も納得です。

 あとトム・フーパーらしく、当時のコペンハーゲンやパリの風景、ファッションはエレガント。アイナーの描いていたデンマークの故郷の風景も、息をのむほど美しいのですが、実はデンマークには山がなく、ロケ地は別のようです。まあ、映画だから許されるウソかもしれませんけどね。
posted by 映画好きパパ at 06:51 | Comment(0) | TrackBack(10) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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