2016年04月12日

蜜のあわれ

 文豪・室生犀星の晩年の幻想的小説を、独自の世界観で知られる石井岳龍監督が映画化。二階堂ふみの小悪魔的演技と、もともと壊れた演技が得意な大杉漣の組み合わせが、なんともおかしな味を醸し出しました。

 作品情報 2016年日本映画 監督:石井岳龍 出演:二階堂ふみ、大杉漣、真木よう子 上映時間:105分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2016年劇場鑑賞73本目 



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村


 【ストーリー】
 老小説家のおじさま(大杉漣)のもとに突如転がり込んだ若い女性(二階堂ふみ)。彼女はなんと、庭の金魚が化けたものだった。時には子供のように、時には妖艶な娼婦のように翻弄する彼女に、おじさまは赤子と名前を付ける。

 おじさまの講演会を聞きに来た赤子は隣の女性(真木よう子)が気分が悪くなったのを介抱したのをきっかけに仲良くなる。ゆり子となのる女性の話をしたところ、おじさまは驚いていう。「彼女は12年前に死んだ。それは幽霊だ」。

 【感想】
 室生が自分自身をモデルとしたような老作家の自由な想像力から生まれた原作を、二階堂という昭和の香りがして、なおかつ、魔性の女になれる逸材が見事に映像に成功しました。金魚のしっぽをなでるおじさまは、性的興奮を得るし、その長くて赤い着物は、見ているこちらにもエロティックな連想をさせます。

 「おじさまの恋人にしてほしくってよ」みたいな、まだるこしい、昭和30年代の言葉遣いは、「この国の空」同様、彼女によく似合います。さらに、おじさまとの仲を嫉妬するゆり子との掛け合いのような喧嘩や、これまた昭和の香りがする金魚売りの男(永瀬正敏)との金魚会話など、どっぷりと当時の雰囲気に浸れます。

 そして、セミヌード(吹き替え?)や、お尻をふりふりする、エロティックでコケティッシュな動きの数々。宮崎あおいに似ているとよく言われますが、こうした小悪魔的な演技は二階堂のほうに軍配があがるかな。演技ができる一方、色っぽく突き抜けた役柄に挑戦する若手女優は、しばらく前は満島ひかりだけだったけど、今は二階堂ふみの独壇場かもしれません。

 大杉との関係性もうまくとらえています。おじさまからみると、赤子は生と性の象徴であるとともに、金魚のはかない命、そして幽霊のゆり子の存在など、死の象徴でもある複雑な存在。彼の焦り、欲望、愛情など複雑な演技をうまくみせています。また、登場シーンは少ないけど、芥川龍之介役の高良健吾も印象的な役。若くして自殺した芥川の存在が、年老いた作家にとって、死と生の象徴になるというのも分かる気がします。

 そして、昭和20年代のセットや衣装の数々。真木の和服の着こなしも見事ですが、なんと言っても赤を基調とした二階堂のファッションは、一周回って現在でもおしゃれに見えるから不思議です。映画館という独特の雰囲気のなかで、幻想世界に酔えるという意味で、テレビではなく映画館向けの作品でしょうね。
posted by 映画好きパパ at 06:38 | Comment(0) | TrackBack(6) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

「蜜のあわれ」:鈴木清順版が観たかった
Excerpt: 映画『蜜のあわれ』は、鈴木清順が映画化を望んで頓挫した作品だということで、なるほ
Weblog: 大江戸時夫の東京温度
Tracked: 2016-04-12 09:42

蜜のあわれ
Excerpt: 老作家の書斎にやって来る愛くるしい少女・赤井赤子。 自分のことを「あたい」と呼ぶ彼女は我儘を言ってばかりだが、老作家は彼女とのおしゃべりを楽しんでいる。 ある日、老作家の講演会を聞きに行った赤子は、客..
Weblog: 象のロケット
Tracked: 2016-04-12 10:19

蜜のあわれ  監督/石井 岳龍
Excerpt: 【出演】  二階堂 ふみ  大杉 漣  真木 よう子 【ストーリー】 丸いお尻とチャーミングな顔の赤子は、自分のことを「あたい」と言い、「おじさま」と呼ぶ老作家と一緒に暮らしていた。赤子には、何と真..
Weblog: 西京極 紫の館
Tracked: 2016-04-13 21:36

ショートレビュー「蜜のあわれ・・・・・評価額1650円」
Excerpt: まあるいお尻の愛しさよ。 作家と金魚と幽霊の、シュールな恋物語。 室生犀星の作品は学生の頃に詩集を何冊かかじった程度で、たぶん小説は読んでない。 だからこんなエキセントリックな話を書いていた..
Weblog: ノラネコの呑んで観るシネマ
Tracked: 2016-04-18 21:38

蜜のあわれ
Excerpt:  『蜜のあわれ』を新宿バルト9で見ました。 (1)二階堂ふみが主演の作品というので映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭では、花が咲いている庭の木がカーテン越しに映しだされ、また老作家(大..
Weblog: 映画的・絵画的・音楽的
Tracked: 2016-04-21 21:24

『蜜のあわれ』
Excerpt: 蜜のあわれ 金魚と作家と幽霊が織り成す、 艶やかで濃密な恋の物語... 【個人評価:★★ (2.0P)】 (自宅鑑賞) 原作:室生犀星の幻想小説
Weblog: cinema-days 映画な日々
Tracked: 2017-01-10 00:14