2016年04月23日

リップヴァンウィンクルの花嫁

 久々の岩井俊二監督が黒木華を新たなミューズに迎えた新作。なんとも言えない不思議な世界に、黒木、綾野剛の演技は見応えがあったけど、BGMがちょっとうるさかった点がマイナスでした。

 作品情報 2016年日本映画 監督:岩井俊二 出演:黒木華、綾野剛、Cocco 上映時間:180分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:T・ジョイプリンスシネマ 2016年劇場鑑賞79本目



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 【ストーリー】
 中学の臨時教員、七海(黒木華)は婚活サイトで知り合った鉄也(地曵豪)ととんとん拍子で結婚が決まる。しかし、両親が不仲で披露宴に呼ぶ親戚がいない七海は、ネットで知り合った安室(綾野剛)という何でも屋に、偽の親戚を用意させ、代理出席させる。

 新婚生活がはじまったが、何かしっくりこない七海。掃除中に女性のピアスを見つけて不安になり安室に浮気調査を依頼する。そこへ自分の恋人が鉄也の浮気相手として奪われた、慰謝料を払えという男(和田聡宏)にホテルに連れ込まれ、義母(原日出子)から、七海こそ浮気をしていると家を追い出される。安室の仕事を手伝うようになった七海は、同じく安室の仕事を手伝っている真白(Cocco)という女性と仲良くなるのだが…


 【感想】
 序盤は隠し撮りでしょうか。ナチュラルな映像にバロックやクラシックを大きな音量で流すBGM。いかにもな展開に岩井ファンかどうかで評価が分かれる作品です。岩井監督と名コンビだった篠田昇カメラマンが死去していらい、岩井作品の世評は今一つですが、篠田の弟子の神戸千木が担当した映像も、僕はやわらかくて好きでした。

 さて、ストーリーですが、なんともつかみどころがない。七海は自分がなさすぎるコミュ障で、みているこちらがイライラする。だから、様々なトラブルに巻き込まれてもざまあみろとしか思えない。ところが、終盤にがらりと様相がかわって、彼女が初めて愛するということを自ら求め、生命ですらもそのために失ってはかまわないという純愛をえるまで成長するところでカタルシスが得られるけど、前半のイライラが長すぎます。

 登場人物も象徴的。この映画では綾野を除いて、男性陣は情けない。母親のいうがままで大人になれない鉄也、七海の父(金田明夫)も、奔放な七海の母(毬谷友子)に振り回されてばかりで、ただただ情けないだけ。これに対して、自分の思うがままに生きる真白(Coccoが好演!)をはじめ、女性陣はいずれも自立して、あるいは狂気じみた自己主張をするなか、なぜか七海だけは、自分をもてないままでした。

 カギとなるのはネットでしょうか。七海はリアルに向き合わず、ネットでつながる安室に頼ります。そもそも鉄也との出会いもネットでした。でも、安室や真白と出会い、リアルのざらつき感、いいことも悪いこともストレートにぶつかってくる現実にいやがおうに向き合うことが、七海の成長につながったのでしょう。その成長の過程を黒木華という女優が全身でみせてくれます。岩井監督といえば、一昔前だったら蒼井優だったでしょうが、そういうえば黒木と蒼井って似たような雰囲気を持っています。

 一方、映画の中で一人自分の世界を開いていて、善も悪も従える妖精のような存在だったのが安室。なにしろ、名前が「安室行舛」(あむろゆきます)で、自分のやっている便利屋の名前が「アズナブル」なのだ。なんでガンダムネタがこんなにでてくるか分からないけど、明らかにリアルとかけ離れた存在で、でも、それを地に足が付く役にしたのは綾野の演技の見事さでした。

 見ている最中は七海のためでイライラしてましたが、見終わってみると3時間があっという間に思えるからなんとも不思議な作品でした。T・ジョイプリンスシネマと名前が変わって初めていった旧品川プリンスシネマ。相変わらずゆったりとみられました。
 
posted by 映画好きパパ at 06:23 | Comment(0) | TrackBack(10) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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