2016年04月26日

ボーダーライン

 原題は「Sicario」。邦題は似たような題名のテレビや映画はあるだけに、最初はどうかと思いましたが、見終わったら、ああ、この題名しかないと腑に落ちました。最初から最後まで緊迫感あふれるサスペンスです。

 作品情報 2015年アメリカ映画 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演:エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン 上映時間:121分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:角川シネマ有楽町 2016年劇場鑑賞80本目



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【ストーリー】
 アリゾナ州にあるメキシコの麻薬組織「ソノラカルテル」のアジトを急襲したFBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は、そこで大量の犠牲者の遺体を発見したうえ、捜査中の警官も犠牲になった。事態を重くみたアメリカ政府は、カルテルを壊滅するべく、極秘に軍、警察、FBIなどからなる特殊部隊を結成。FBIからはケイトがメンバーとして送られる。

 部隊は、謎の男マット(ジョシュ・ブローリン)に率いられ、アメリカ人だけでなく、メキシコの元検事アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)も加わっていた。メキシコの国境の町ファレスで、組織の幹部を引き取りに行ったケイトは、そこが戦場といっていいぐらい危険な場所としる。そして、マットやアレハンドロも、組織壊滅のためには手段を選ばない男達だった。

 【感想】
 冒頭の麻薬組織のアジト急襲から、とにかくどきどきしっぱなし。アジトで大量の遺体が見つかるシーンや、その後の思いもがけずに反撃を受ける場面から、登場人物のいつだれが死んでもおかしくないという、リアルな危機感が観客に共有されます。しかも、低音を多様したBGMがゾクゾクするほどもり立ててくれます。

 ケイトはFBI捜査官といえども、人質救出の専門家で、大量の遺体に吐き気を催したり、犯人を射殺したあとショックを受けたりします。でも、マットもアレハンドロも、そんな人間性は皆無。麻薬組織との闘いでは、そうした人間性はむしろ邪魔になるということが、過酷なエピソードの数々を通して明らかになっていきます。

 だから、ボーダーラインは、アメリカとメキシコの国境線という意味もあるけれど、人間性をもつかどうかのボーダーラインという意味もあります。ケイトが犯人を射殺したり、爆発の被害を受けたりするのがいずれも屋内であるというのも、外に出てどんどん犯人を射殺している他の部隊員たちとの違い、ボーダーラインを浮き彫りにしています。

 そのメキシコの密輸組織の残虐性ですが、映画で誇張しているかと思いきや、現実にも何千人という人が見せしめのために残酷な手法で殺害されているそうで、ロケなどにも大変な苦労をしたそうです。

 クライマックスからラストにかけては賛否がわかれるだろうけど、ここでもボーダーラインという言葉が重くのしかかります。エミリー・ブラントは、FBI捜査官にしては線が細い気もしましたが、ここで彼女を起用した理由を納得しました。ギャング役が多いベニチオ・デル・トロは、最初は冴えない中年男だったのに、どんどんハードボイルドの世界にそまっていって、名優だなとしみじみ思いました。

posted by 映画好きパパ at 06:43 | Comment(0) | TrackBack(12) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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