作品情報 2015年アメリカ映画 監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア介 声の出演(日本語版):上戸彩、森川智之、三宅健太 上映時間:108分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2016年劇場鑑賞92本目
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【ストーリー】
動物たちが進歩し、文明社会を築いた世界のお話。田舎から動物たちの楽園の町、「ズートピア」にやってきたウサギのジョディ(声・上戸彩)は、自分の夢をかなえ、ウサギとしては初めての警察官になる。
だが、他の警察官はゾウ、クマなど大きな動物ばかりで、ジョディは水牛のボゴ署長(三宅健太)にバカにされ続ける。そのころ町では肉食動物連続行方不明事件が世間を騒がせていた。捜査に強引に参加したジョディは、2日以内に手がかりを見つけなければクビだとボゴ署長に通告される。事件の目撃者で、キツネの詐欺師ニック(森川智之)に協力を求めるのだが…
【感想】
制作は数年かけているから、今年公開というのは偶然だけど、アメリカ大統領選や中東情勢をはじめ、世界で差別や不寛容が問題となっているなか、ずばっと直球で差別はよくないと訴えるテーマ性がすばらしい。動物の楽園のはずのズートピア。けれども、ウサギはかわいいけどおろか、キツネはずる賢くて信用できないといったステレオタイプの決めつけが行われています。
ニックがアイスクリームを買いに行ったら、ゾウの店主からは販売を拒否されます。これは実際に黒人に販売を拒否した店の張り紙と同じだそうで、ジョディがニックを助けることで、人種差別はよくないし、差別主義者をぎゃふんといわすることが痛快に伝わります。ニックが子供時代に、キツネはずるいやつだと、草食動物の子供たちからいじめられる様子をみると、腹が立ってたまらないでしょう。
ところが、本作の素晴らしいのは、本人は善人で正義感の強いジョディが、後半、ある出来事から差別意識を無意識にもっていることを糾弾されること。子供時代にキツネにいじめられた経験が伏線になっていますが、自分がどんなに正義の人だと思っても、思い込みや無意識に他人を続けるということが起こりうる、そんな構造を見事に明らかにしています。終盤は差別がむき出しなり、ユートピアがデストピアになりかねないところでした。こうした状況が良くないと明確に打ち出しているディズニーは尊敬できます。
もう一つ、夢を最後まであきらめない大切さも伝わります。ジュディの両親は夢を追わずに田舎にずっと住むことが幸せだと教えますが、ジュディは警官になりたいという夢をあきらめません。最初は小さいからとバカにされても、智恵と勇気、そしてニックとの友情で難事件に挑んでいく。自分の夢をしっかり持ち続ければ、難問も解決できる様子は、いい年したおじさんの心をもわしづかみにしました。
一方、エンタメ面としてのできもさすが。「ゴッドファーザー」そっくりのマフィアの登場や、暴走機関車での追いかけっこ。そして、収容所への潜入劇。ディズニーだからハッピーエンドだろうと思っているとはいえ、手に汗握るシーンが続出しており、最後までスクリーンから目が離せません。
また、公式サイトでも見られますが、序盤の上京シーンの美しいアニメーションの数々。雨のジャングル、氷の世界、壮大なサバンナなどを通り過ぎて、ズートピアの中央駅では、大きな動物から小さな動物まで、それぞれの個性にあった行動をしています。さらに、ポップなBGMで、ノリノリに。作画、音楽といった隅々まで行き届いています。
さらに、脚本がものすごくうまい。最初のジョディにトラウマを与えた子供時代をはじめ、登場人物や小道具に無駄はなく、最後までしっかりと伏線が改修されます。「アナと雪の女王」の主題歌「Let it go」をからかったり、ミッキーマウスがゲスト出演?したりとか遊び心も十分。「アナ雪」が歌の魅力が大きかったのに対して、トータルでの楽しさというのはこちらのほうが上ではないでしょうか。日本語版も上戸以外はベテラン声優をそろえ、上戸自身もすんなり世界観に溶け込んだ声であり、十分楽しめました。子供向けとあなどらず、多くの人にみてもらいたい作品です。
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