2016年06月05日

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ

 社会派エンタメドキュメンタリーという他に類を見ない作品群を作り出すマイケル・ムーアの最新作。アメリカとヨーロッパを比較して、いかにアメリカが非人間的でカネまみれの国になっているかを打ち出していますが、プチアメリカともいうべき日本にとっても参考になることばかり。人間にとっての幸せとは何かを考えてしまいました。

 作品情報 2015年アメリカ映画 監督・出演:マイケル・ムーア 上映時間:119分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2016年劇場鑑賞108本目 



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 【ストーリー】
 ベトナム、イラク、アフガン。戦争で成果が上がらないアメリカは、マイケル・ムーアを侵略者に仕立てて、ヨーロッパから様々な良い制度や文化を略奪するように命じた。

 さっそく、ヨーロッパ各国を回るムーアだが、年間8週間も有休があり、昼休みは2時間(イタリア)、小学校の給食はフルコース(フランス)、会社が終了後は上司が部下に連絡するのは禁止されている(ドイツ)など、アメリカでは考えられない非常識に目を白黒する。

 【感想】
 作品のなかでふれられているように、各国には欠点もあり、長所ばかりではありません。しかし、その長所の部分を取り入れることというのが、国際交流としては肝要でしょう。まず、イタリアの有休制度やドイツの就労制度ですが、大企業の幹部も積極的に歓迎しています。社員のストレスがたまらないことで、労働の成果があがるからです。

 実際、これだけ休みをとっているイタリアですが、労働生産性は日本よりはるかに上。企業のほうからしても、残業代をとられたうえで生産性が上がらないよりも、よほど収益の効率がいいわけです。そして、社員の方は人生を有意義に楽しめる。

 また、食育に力をいれるフランスや、宿題がないのに学力が世界トップのフィンランドをみると、教育とは何かを考えさせられます。フィンランドの教育担当者は、学校教育とは幸福な人生を送るすべを教えるもの、と断言します。従って、美術、音楽、詩といった人間の情操を豊かにするものに力を入れ、詰め込み教育をしません。これも、受験受験で追われる日本の子供からすれば天と地の差になります。

 このほか、男女平等や平和教育など、ムーアはアメリカがいかにひどいかと比較していますが、日本人にこそ突きつけられている課題ではないでしょうか。アイスランドで金融危機が起きたとき、女性が頭取の銀行だけが生き残り、その理由を説明する場面がありますが、納得できました。

 麻薬を解禁したポルトガルのように、僕からすると、そこまで礼賛する必要があるのかという国もでてきます。けれども、政治、経済、文化、教育さまざまな分野からヨーロッパの長所を取り上げる本作は、豊かさとはお金や出世でないということを教えてくれます。邦題に難ありですが、今の日本社会のおかしさも分からせてくれ、ぜひとも多くの人にみてもらいたい作品です。
posted by 映画好きパパ at 07:21 | Comment(0) | TrackBack(5) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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