2016年06月06日

ディストラクション・ベイビーズ

 荒削りながらもエネルギーと人間の暗い情念を感じさせる傑作。今旬とも言える若手俳優達の体当たりの演技も見応え十分です。

 作品情報 2016年日本映画 監督:真利子哲也 出演:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈 上映時間:108分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2016年劇場鑑賞109本目 



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 【ストーリー】
 松山の漁港に弟の将太(村上虹郎)と二人で住む18歳の泰良(柳楽優弥)は、だれかれ構わず喧嘩をふっかけることで、周囲から恐れられていた。あまりの荒れっぷりに親代わりの近藤(でんでん)から勝手にしろといわれた泰良は、繁華街で理由もなしに片っ端から喧嘩をふっかけ、殴られても殴られても、執念で相手を倒していた。

 ヤクザに血まみれになりながら挑む泰良をみて、何もやってもうまくいかない高校生の裕也(菅田将暉)は、彼を兄貴分としたい、一緒になって町で暴れる。警察に追われ、車を奪った二人だが、中にキャバクラ嬢の那奈(小松菜奈)が乗っており、彼女も巻き込んでいく。

 【感想】
 とにかく暴力衝動のまま動く泰良は、セリフの少ないこともあり、不気味な存在。序盤はまだ喧嘩好きの青年という感じだったが、話が進むにつれ、狂気はましていき、最後は天災のようにふれあった人に不幸をもたらす。ラストシーンが漁港の喧嘩御輿というのが象徴的で、荒ぶる神が降臨した印象を与えてくれました。

 とにかく暴力の連鎖で、特に、裕也は女性や老人など自分の勝てる相手にいきなり殴りかかりぼこぼこにします。最初は嫌悪感が生じるけれど、次第に見ているこちらも暴力衝動という心の闇に火がついてきます。そして、二人の暴れる様子をもっと見ていたくなる。

 暴力シーンは映画的な派手なものでなく、空振りもあれば、フェイントもあるというもので、リアルさというものも感じられます。泰良の驚異的な回復力というのは、映画的なフィクションなんでしょうけど、結局、暴力の象徴でしか過ぎないのですから、そこがこの作品を受け入れられるかどうかなのかもしれません。すなわち、観客である自分も暴力衝動に巻き込まれるか、それともそんなものは絵空事と局外者のままなのか。

 ただ、BGMも含めて、こういった勧善懲悪なんかぶっとばして、徹底的に暴力を暗い衝動で描く作品って20〜30年前の雰囲気がただよいます。もちろん、SNSなんていうのもでてきますけど、エクスキューズにしか感じない。当時、大藪春彦という「野獣死すべし」などを書いた小説家がいましたが、ああいうノリですよね。

 何を考えているか分からない柳楽、自分が小物であるがゆえに暴発する菅田の2人ははまり役でしたが、それ以上の拾い物は小松で、万引きはするは、弱者をいじめるは久々の性悪女役。しかし2人の犯罪に巻き込まれ、胸はもまれるは、トランクに監禁され暴行されるは、大変な目にあいます。彼女も「バクマン」のような大作のヒロインよりは、こういうとんがった役のほうが印象に残ります。

 ラストカットになってタイトルロールがでても、もう少し、この世界にひたっていたかった。そういう気分になったのも久しぶりでした。
posted by 映画好きパパ at 07:15 | Comment(0) | TrackBack(5) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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