2016年06月08日

神様メール

 ヨーロッパ映画らしいブラックジョークを織り交ぜながらも、人が生きる意味や愛することの大切さをうたいあげています。でも、内容はキリスト教批判があちこりにちりばめられており、本国で大ヒットしたのがちょっと不思議。

 作品情報 2015年ベルギー、フランス、ルクセンブルグ映画 監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル 出演:ピリ・グロイン、ブノワ・ポールヴールド、カトリーヌ・ドヌーヴ 上映時間:115分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ新宿 2016年劇場鑑賞111本目 

 

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 【ストーリー】
 神(ブノワ・ポールヴールド)は実在した。それもブリュッセルのマンションに。しかし、退屈しのぎに人間を創造しては苦しめて遊んでいる。家庭ではアル中でDV男。こんな神に怒った10歳の娘エア(ピリ・グロイン)は、神の作業用パソコンを勝手に使って全人類に自分の余命をメールで教えてしまった。

 人間界は大騒ぎ。エアは兄のイエス・キリスト(ダヴィッド・ミュルジア)のアドバイスに従い、人間界で自分の使徒を6人みつけ、新・新約聖書を作って世界を救うことにする。一方、怒った神はエアを捕まえようと追いかけるのだが…

 【感想】
 神様が旧式のパソコンで人間界を苦しめているという奇想天外な発想ではじまりますが、この神様が怒りっぽいというのは、旧約聖書の怒れる神を表しているのでしょう。その神様のせいで、人間同士が争い、苦しんでいるというのは、キリスト、イスラム、ユダヤの各宗教が同じ神を信じているのに紛争がたえないという現実を風刺しています。

 また、神様が異様に細かい規則、例えばパンが落ちるときは必ずジャムがついてある面から落ちるとか、レジで並んでいるとき、隣の列のほうが先に進むとか、実際にあるある的な面で人間を苦しめているというせこさが笑えます。その神が人間社会ではエアに出し抜かれるどころか、喧嘩でチンピラにも負けてしまうという情けなさがなんとも言えません。

 一方、エアやエアの母である女神(ヨランド・モロー)は怒れる神のDVに苦しめられています。しかし、彼女たちは善良さの象徴でもあります。これは男性よりも女性のほうが、母性もあって物事を暖かく見られるという点に通じるのかもしれません。

 使徒の候補は、適当に選ばれた6人ですが、それぞれ余命をしって、ゴリラと恋に落ちた主婦(カトリーヌ・ドヌーブ)や、女の子になると宣言した少年(ロマン・ゲラン)、退屈で平凡な仕事をなげうって鳥を追いかけて世界中を冒険する初老のサラリーマン(ディディエ・ドゥ・ネック)などなど、宗教や社会常識で縛られたモラルから開放されているというのも、現代社会への痛烈な皮肉です。

 小難しい話ではちっともなく、人間それぞれが名曲を持っているという発想や、6人それぞれ愛を見つけるというのは、ヨーロッパ映画らしい人生賛歌といえましょう。ブリュッセルでJCといえば、イエス・キリストでなく、ジャン・クロード・バンダムのほうだというのも笑えました。心温まる作品で、エンディングが流れるときはウキウキ踊り出したくなりました。

 主役はブノワ・ポールヴールドですが、実質的にはエア役のピリ・グロインが主人公で、彼女の賢さ、けなげさ、天才子役ぶりには頭が下がります。カトリーヌ・ドヌーブほどの大女優がベッドでゴリラと抱き合うシーンはびっくりしましたが、寡作だけど名作ばかり撮るジャコ・ヴァン・ドルマル監督だからこそ、役者陣も一風変わった役に挑戦できたのかもしれません。
posted by 映画好きパパ at 07:08 | Comment(0) | TrackBack(6) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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