2016年06月14日

ヒメアノ〜ル

 前半はラブコメ、後半は緊迫した暴力映画となる問題作。森田剛がアイドルとは思えない、狂気の連続殺人犯を演じているうえ、ラストの着地が素晴らしく、見終わった後も強い印象が残る作品です。

 作品情報 2015年日本映画 監督:吉田恵輔 出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美 上映時間:99分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2016年劇場鑑賞116本目 



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 【ストーリー】
 フリーターで毎日を何となく過ごしている気弱な青年岡田(濱田岳)は、ミスをかばってくれたバイト先の先輩・安藤(ムロツヨシ)と仲良くなる。安藤は外見も気にしない上、近くのカフェの美人店員ユカ(佐津川愛美)に一方的な片思いをしているキモイ男だった。

 安藤からカフェによくくる男がユカを狙っているようだと言われた。その男が高校の同級生・森田(森田剛)だったことに驚く。ユカによると森田はストーカーまがいの行動をしており、岡田と安藤はユカを送り届けることにする。さらに、安藤から恋のキューピッドを頼まれた岡田だが、意外にもユカから告白され…

 【感想】
 前半のラブコメ部分は、「さんかく」の吉田監督らしい、ちょっと変わった三角関係とほのぼのしました。気弱で女に奥手の岡田と、おまえのほうがストーカーだろうと突っ込みたくなるような安藤に対して、絵に描いたような美少女のユカ。安藤の思いを知りつつ、積極的なユカに流されるままの岡田のダメさ加減に多少歯がゆくなりましたも生暖かく見守りました。ユカをビッチ的なキャラクターに仕立てた脚本もうまい。それからタイトルの出し方といいタイミングといい、センスの良さが光りました。

 それが後半は連続殺人犯・森田による猟奇サスペンスに一変。実は前半に巧みな伏線が仕込まれており、あとになると、すべて腑に落ちる感じです。その森田ですが、高校時代に酷いイジメをうけて人格が崩壊し、いじめっ子を殺害。その時の行動など、完全にいっちゃった感じで、しかもここまでやるのかという演技に、正直脱帽しました。

 その後、底辺でくすぶっていた森田ですが、ある事件をきっかけに、さらにたがが外れて、息を吸うように人を殺していきます。腹がへればその辺の家に押し入り、妻を乱暴した上殺し、夫も無造作に殺害したあと、平然と食べかけの食事に戻る。その一方で、小柄で喧嘩も弱く、町で絡まれたチンピラにはボコボコにされる。そんな二面性の森田の表情の変化はなんとも言えません。

 同じ底辺でも、趣味も好きな人もない岡田、好きな人がいて前向きに生きる安藤と、そして、何かを得ようとして狂っていく森田の対比がなんともいえず素晴らしい。森田が趣味のパチンコに笑顔で夢中になっている姿をみると、人間なんてちょっとしたスイッチで狂ってしまうことが実感されます。

 本当は良くないのだろうけど、先日見た「ディストラクション・ベイビーズ」同様、何も持たない主人公の暴力を応援したくなりました。被害者たちは、定職や家族、マイホームをもっている幸福な人たち。何も持たない森田からすると、無意識とはいえ、そうした人たちへの復讐という側面もあったのでしょう。そこが僕の共感を呼びました。このへんは幸せな生活を送っているかどうか、観客によって違うでしょう。さらに、いじめがきっかけであったわけですから、個人的にはいじめにかかわった人たちをみなごろしにするくらい見たかったなあ。そして、反則ともいえるべきラスト。あれはすごかった。

 森田は自分の名前と同じ役名をどう感じたのか知りたいところ。佐津川も童顔だけど、結構、芸歴は長いのですが、まさに体当たりの演技でした。濱田、ムロのいかにも底辺の人たちという演技はさすがですが、なんと言ってもそれ以外の脇役たちのナチュラルな存在ぶりも見事でした。
posted by 映画好きパパ at 06:40 | Comment(0) | TrackBack(12) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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